必然は偶然、偶然は必然 第十話

・・・かつての未来にてルーク達はガイがいかにピオニーも含めたマルクトの上層部に邪険に扱われていたかを知っているが、それ以上にそんな上層部の邪険に扱う理由を全く解そうともせず不当なものとガイはただそう思い行動してきたことを知っていた。

とは言えそのガイが邪険に扱われる理由はピオニーがガルディオスの遺児という立場もあって自身を可愛がっていたことからの立場を傘にきた態度で、ルークに遠慮しないような態度でほとんどの人物に接していたという本末転倒極まりない理由だ。だがガイはその態度を一切改める事はなかった・・・ピオニーから遠回しで伝えられた言葉も理解できず、直接的に自重しろと言われた言葉すらも無視する形で。

・・・そこまで言われるに至ったのはキムラスカにダアトが大分崩れ始めマルクトは二の舞を踏まないようにしないといけない時だったのだが、慎重に行くべきだというピオニー達を始めとする重臣達のほとんどに対しガイはただ反対した。マルクトは両国をすぐさま助けるべきだと、何の具体案も示さずピオニー達に丸投げするような感情論のみで。

・・・それでピオニーから個人的に呼び出された訳だが何も聞かないガイは結局マルクトの総意をただ反対だと言うだけ言うという、これ以上ない暗愚な臣下としての姿を露呈していった。ピオニーが病床に着くまで・・・ちなみにルーク達はその病気の一因は間違いなく足並みを揃わせようとすらしないガイがピオニーを大いに煩わせた事にあると見ている。

・・・ただ1つ補足を入れておくなら、それでもマルクトが表向きにガイを排除しようとしなかった理由はかつて世界を救った英雄全員が愚かと見せるのは対外的にも内政的にもマズイと感じたからだ。ヴァンを止めた英雄達、その名はタタル渓谷でアッシュが戻るまではそれこそ英雄と各地で歓迎される程に神聖さに満ちた物だった。だがキムラスカにダアトと次々に英雄達が不祥事を起こしていき、最後に残ったマルクトの英雄達までもが愚か極まりない事を起こしたと知られたなら・・・ヴァン達の起こした一連の事件は何だったのか、あの事件はあんな者達にでも解決出来るのかと言われてしまっていただろう。

もしそうなっていたなら既に混乱していたキムラスカにダアトは更に混迷を強め、マルクトもその混迷の中にいた可能性が高い。何故かと言えば全員が無能だと見られたならそんな奴らを使う国の上層部はなんなんだと疑問視され、全ての不満がたまたまヴァンを倒したというだけの連中を優遇する上層部にぶつけられると推測されるからだ。

・・・そんな事態を引き起こされればもう取り返しがつかない、だからマルクトの英雄二人は聡明な存在で他とは違うからこんな結果になった・・・という風に見せなければマルクトさえも危うくなると思ったが為にピオニー以下のガイを除いた重臣一同はジェイドも含め排せなかったのだ、密かに排したなら排したで結局二人も愚か者だったのだと悟られる事を避けるために。

・・・こう言ったマルクトの水面下の努力によってオールドラントはギリギリの領域で世界全体を巻き込むような民の国に対する一斉蜂起は避けられていたのだが、ピオニーが倒れた時点でそれが崩れるのはそれより先を見ていないとは言え容易にルーク達にも想像が出来ていた。



(・・・今更ファブレに対しての恨みを忘れろ、なんざ言わねーよ。恨みたきゃ恨め、お前1人の考えなしの勘違いで世界が滅ぶってなんなら喜んで俺はお前に恨まれてやる)
・・・かつてを思い、今を想う。だからこそ言える、かつての旧交などもう自分の望む世界へと天秤にかけるまでもないと。



ルークはその実自分を見下していた自称親友からの恨みを受けることなど屁とも感じる気もなく、破滅を招く英雄の座から引きずり下ろすべく更に口を開く。







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