必然は偶然、偶然は必然 第十話

「・・・それではティア、改めてお聞きします。貴女は何故ルークに謝る事がないどころか、自身がルークと対等であると言えたのですか?貴女が思ったありのままに話しなさい、理由がわからないことには僕もどうとも言いようがありません」
「・・・・・・それは、ただルークがファブレの貴族らしくないから・・・それで対等な言葉遣いでいいかと、思い・・・・・・」
「それだけ、ということですか・・・」
そんなティアに敢えてルークと同じ質問をしてやれば、相手がイオンという事で失望を買ったこともありもう拒否は許されないと感じたのか失意のままに・・・馬鹿で正直にその訳を答えると、イオンは嫌悪感を抱きつつ以前から聞きたかったことを聞こうとリグレットに視線を向ける。
「・・・リグレット、こういう事は聞きたくはなかったのですが貴女はティアにどういう教育を施していたのですか?」
「・・・耳が痛い話です、私もこれほどまでと思っていませんでした・・・」
「教官・・・!?」
その心からの疑問にリグレットも実物を目にして初めて心の底から痛ましいと頭を手で押さえて言うと、ティアが驚愕に視線を向けるがリグレットは哀れみすら浮かべた視線を向けながら返す。
「ティア、私はお前に軍人として必要な戦術に戦略及び戦闘技術を中心として教えては来た・・・だがその中に目上の者への対応なども学ばせてはいたはずだが年が近い、言葉遣いが普通の貴族と違うというだけで対等に接していいなどと私が教えたことはあったか?ましてやそのような態度が許されるなどと言ったか、私は?」
「い、いえ・・・」
「・・・どこで間違ったというのだ、私は・・・いや、違うな。間違っていたのはヴァンに付き従う事こそが唯一と思ってた時からか・・・ふふ・・・」
「・・・きょ、教官・・・?」
そこから厳しくはあるが力ない問いかけにティアはリグレットは間違ってないと恐る恐る首を横に振るが、明らかに反射的な庇いだての考えなしに近い物と感じたリグレットは育て方を間違ったと思うが考え直し自分も間違っていたのだと自嘲の笑いを浮かべる。ティアは今までに見たことのないリグレットの様子に戸惑いの声を上げるが、ルーク達はリグレットが正しいと感じていた。手塩にかけて育てた生徒の実態が実際は自分の思っていた育ちかたと予想より悪い方向でかなり違っていたことに愕然とし、笑いがこぼれるのは当然だろうと。



と、ここで話をまた自身主導に進めるべくイオンが口を開く。
「・・・ではリグレット。貴女は常にティアの側にいて鞭を取っていたのですか?」
「・・・いえ、神託の盾としての活動がありますのでそう常にという訳にはいかずに度々時間を作って行っていたくらいです。ただその分教鞭を厳しく取り、教官としてティアと接していたのですが・・・」
「成程、リグレットとしては自身が教えた物と違った結果をティアは招いたという訳ですね?」
「・・・恥ずかしながら私の指導不足です、時間が足りなかったなどというのは言い訳にも出来ません・・・」
「っ・・・!」
その中身はティアへの教導のペースだが頻繁ではないと言いつつも自身の教え子の不祥事を自身の力不足が引き起こした物であると嘆くリグレットに、ティアが何を言っていいのかと悲痛さに歪み顔を背ける。









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