必然は偶然、偶然は必然 第九話

・・・それからセフィロトを出たルーク達はアッシュを街の宿にセネルの監視つきで放り込んだ後、行動不能の住民の人達を助けるべく率先して坑道の中に行き人々を外に担いでいった。特にルークは今まで見せていた何も知らない傲慢なお坊ちゃんという顔を捨て、真剣に住民の人達と向かい合い。

その時アニスはトクナガを巨大化させて住民を担いでいったからまだいいが、ティアは自身は譜術を使うなどと言いルーク達に力仕事の全てを押し付けようとした。だがそんな姿勢を見せるティアにイオンはこう言い放った。



「もういいです、貴女は入口で待っていてください。後方支援しかしない人が前線に出て、口をしゃしゃり出されても士気が下がるだけです」
「!イ、イオン様・・・だ、だったらイオン様も・・・」
「僕は何も出来ないからこそ偉ぶる事もしたくありませんし、引きたくもありません。ですが貴女は譜術を使うのだからいいだろうと偉ぶるだけで、自分の役割以上の事をしようとせず人にはそれ以外をやれやれと言い放ってます。そんな人をこの場にいさせたくもありませんし、一緒にいたくもありません・・・何をしているんですか?後方支援しかしない人はさっさと自分の役割に徹して前線から撤退してください、邪魔です」
「っ!・・・・・・はい、失礼します・・・」



・・・本当はイオン自身も健康体を手に入れた事もあり、体を張ってアクゼリュスの住民の人達を助けたいと思っている。だがルークと違って立場があるからと自身が働くことを認めないティアとアニスがいるからとそれは表の立場もあり、歯噛みして耐えるしかなかった。

だからこそティアの戦闘にも通じるその行動が、イオンからして見れば不快極まりなかった。自分のメインのやり方である後方支援という役割は果たしている、だからそれ以外は邪魔をするなと言い全てを任せる・・・そんな態度を露骨に見せられ、今のイオンが我慢する気など自身の葛藤もあり耐える気はなかった。

今の前線の役割と言える住民の運び出しを暗に拒否し、力仕事をしようとしない・・・そんなティアに反論など許さず許させない苛烈でありティアの自身の分以上の事をするのを嫌うという本質を突いた冷酷で怒気のこもった突き放す言葉に、ティアはイオンからの拒否の色が強い命令に逆らう事はなかったが顔を落としショックを隠しきれずその場を後にした。アニスはアワアワと両者を見ながらもイオンに対して畏怖のこもった目をしていたが、ルークはそれなら自分も力仕事をやりますと言えなかったティアが甘いんだという考えを心の中で浮かべながらも住民の外への運搬に従事していった。












・・・そんなティアの突き放しをイオンがしたことがありつつ、ルーク達は少ない人数ながらも救助活動を真剣に行った。とは言え広大な街の中をイオンが動けずに四人足らずで全てカバーを出来る訳ではないが、それでも少しでもやれることをやるためだと足を止めることなく動いた。尚、ティアはイオンを見ては妙な戸惑いを見せては顔を背けたりなどしていた。



「・・・ん?」
・・・そのような状況で時が過ぎていったのだが、何回目かの住民の人々の運び出しをしに入口へ来た時ルークはある姿を目撃して歩みを止める。
「・・・よかった、無事で何よりだ」
「あぁ、ウッドロウ。そっちも終わったんだな・・・ん・・・」
そこにいたのはウッドロウとハロルドで、ルーク達に近付きウッドロウが安心したと声をかけてきたことにルークは笑顔で答えつつもその後ろにいる人々に気付き視線を向ける。







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