必然は偶然、偶然は必然 第九話

・・・過去は消せないが、戻ってきた過去という今なら変える事は出来る。ルークとイオンの二人は過去のあの無惨な結末を避けるべく、デオ峠を抜けアクゼリュスに向かう・・・















・・・そしてルーク達は辿り着いた、紫色の空間が目にも体にも毒々しい、セフィロトとしての寿命を迎えたアクゼリュスの地に・・・



「・・・ようやく着きましたが・・・」
「酷いなこれ・・・やっぱり・・・」
街の入口に立つルーク達。その中でイオンとルークは改めて見るこの惨状に、痛ましく顔を歪める。後半は周りに聞こえないよう小さく言ったルークだが、他のティア達一同はそんな事には気付けずいる。
「・・・あの、貴殿方はキムラスカから来られたのでしょうか?私はこの街の代表者のパイロープと申します」
「・・・あぁ。私がこの一行を率いる親善大使のルークだ、早速だが状況を聞かせてくれ」
すると一同の前に歩いてきて姿を現したのは以前のように代表者のパイロープ。その姿にルークは真面目に表情を引き締め、口調も私と慇懃さを残しつつも貴族なら許される範囲で厳格に現状を問い掛ける。後ろから意外そうなアニスやらガイやらの目とヒソヒソ話が振りかかるが、今更ルークは気にしないししていられるほど暇でもなかった。
「はい、酷い有り様です・・・この通り街中にはかろうじて生きている者も気力を失い、また鉱山の中にはまだ何人も倒れている者がいるとのことです・・・お願いです、早く皆を助けてください・・・」
「・・・状況はよくわかった、手は尽くそう。だがいくらこちらに第七音譜術士がいるとは言え、この障気が滞留する地に居続ければ手当てを施してもまた障気にあてられかねない。だから動ける者達は出来ればしばらく障気の及ばない所にまで離れるよう伝えてくれ。そう言ったことで手をこまねいていたなら、治療しては倒れ治療しては倒れのいたちごっこになりかねないからな」
「はっ、はい・・・では動ける者達にはそう伝えて参ります・・・」
状況を語りながらも悲嘆さを多大に滲ませるパイロープの懇願に、ルークは素で返しそうになるのをこらえつつも凛とした態度で街の外へ出るよう危険に関しての推測を交えて命令をする。パイロープもいたちごっこと聞きより危機感を感じたのか、すぐさま街の中へと姿を翻していく・・・
「ルーク、貴方私達の断りも無しに・・・」
「だったらお前この街にいる人間全員治療するまでの間、障気に治療した人達がまたやられないなんて保証出来るか?」
「っ!?・・・そんなの、出来ないわ・・・」
だがすぐさまルークの発言だからと否定をしかけてきたティアに、有無を言わさずルークは否定をすることの出来ない材料を改めて言い直して持ち出しその首を苦々しく横に振らせる。
「さーて、納得してもらったところでちょっと役割分担すんぞ」
「役割分担?なんだよ、ルーク」
「今のアクゼリュスの人達にここから動いてもらうのはいいんだけど、外には魔物がいるからな。それで看護兼護衛をする役とこっちで鉱山内にいる人達を助ける役に分けるんだよ。そっちの方が効率的だろ」
「ま、まぁ確かにそうだが・・・」
明らかに意気消沈したティアを尻目に役割分担と言い出したルークにガイはどういうことかと首を傾げるが、また後の対応を考えた内容を受けガイはひきつりかけつつも納得の声を上げる。
(そんなに俺がまともなのがおかしいか・・・いや、違うな。コイツらは俺がコイツらにとって都合のいいルークであってほしかったんだ、髪を切る前も切った後でもな・・・)
その様子にルークは改めて考えていた。コイツらは利口なルークが欲しいんじゃなくて、ましてや馬鹿なルークが欲しいんじゃない。自分達にとって都合のいいルークが欲しかったのだと。



・・・好きだという人間が利口であることを嫌う人間など普通いない、普通は利口であることは素直に喜ぶものだ。だが今のように、そして過去に正論を言ったとしても受け入れられることなくあまつさえ不満だという態度をぶつけられることがしばしばあった。そしてそこから自分達に従順な態度であってこそルークを好ましいと見ていたのだと、変わると言っても自身達の望むレールの上ででなければ認めたくなかったのだと。



(ま、別にいいさ。コイツらにまともだとか変とか今更どう思われたって構わねぇし)
しかしそれこそ今更だと思いルークは別にいいかと考える、ティア達の評価など自分から願い下げだと思いながら・・・







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