必然は偶然、偶然は必然 第八話

「・・・すまないな、迷惑をかけた」
「いや、気にしないでいいよ」
・・・そして意を決して顔を離し手で距離を取ると、リグレットは謝りを入れる。その様子にウッドロウはなんでもない様子で首を振るが、リグレットは改めてゆっくり想いを込めて口を開く。
「・・・お前の話で昔を思い返した、今のように行動する前の自分を・・・今更な話だがお前と話して、私は道を誤っていたと思った。そして今更、私は閣下の望むやり方で預言からの解放を望めるような気持ちになれないということを・・・それで、だ」



「・・・私はお前、ウッドロウと共にこれからの人生をやり直したい。ウッドロウ、お前は私を受け入れてくれるか・・・?」



・・・リグレットの声は毅然とした強さが伴われていたが、反面で断られる事への恐怖が見てとれるような想いが込められていた。だがこれはリグレットから考えれば全ての転機として、一人の人間として自分をウッドロウに受け入れてもらいたいという想いがあるからだ。
(頼む・・・!)
・・・これはスタートライン、新たな事を始める為の重要な区切りをつけるための一歩。それをつまづきたくないと思うのは当然であり、ましてや自身に大事な事を思い出させてくれたウッドロウに否定されたくはない・・・リグレットは心の中で断絶の声がないことを必死に祈るが・・・



「勿論、受け入れるよ」



「えっ・・・!?」
元々からリグレットを救いたいと思っていたウッドロウがその声を断る訳がなかった。あっさりとした受け入れにリグレットは予想外だと愕然とするが、ウッドロウは自然に穏やかな笑みを浮かべる。
「何か、おかしかったかな?」
「い、いや・・・そうすぐに返事が来ると思わなかったから・・・」
「ふふ、予想外だったかい?だが私は君を見捨てる気などないからすぐに答えた、それだけのことだよ」
「・・・フフッ」
そのまま落ち着いた様子を見せながら自身に問う声にリグレットは自身の動揺を隠せずに返したが、依然として落ち着き笑むウッドロウの様子に少し笑みをこぼし落ち着きを取り戻す。
(・・・そうだな、コイツはこんな男なんだ。フッ、何かビクビクしていた自分が馬鹿らしく思えてきた・・・)
今までの流れから思い直し逆に自分の事を断るウッドロウの姿は思い浮かばない。そう自身が考えれなかった事にリグレットは冷静さを失っていた事を自覚した自嘲の笑いがこぼれていた。
(・・・だがだからと言って甘えは許されんな、これから私はやり直すために動くのだ。おんぶにだっこなど私自身認められる物ではない・・・!)
しかし生来の性格である生真面目さまでもを無視出来る程、リグレットは変わってはいない。あくまでも自身の行動でやり直すのだと強く想いを込め、真剣な表情でウッドロウに顔を合わせる。
「ならばこれよりは私はお前達の力とならせていただく、至らぬ点もあると思うが・・・よろしく頼む」
「あぁ、よろしくリグレット」
・・・しっかりと力のこもった宣言と共に差し出した手を、より良い笑顔を持って握り返すウッドロウ・・・
(そう、私はウッドロウと共にこの世界をより良く変えるのだ・・・!)
その握り返された手の感触を感じながら、リグレットは強い決意を改めて自身の中で燃え上がらせる。



・・・だがリグレットはその時知らなかった。自身の中にあった信望すべきヴァンという存在がウッドロウに成り代わった事で、自身にもたらされる劇的な変化が訪れる時が来ることを・・・









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