必然は偶然、偶然は必然 第八話

「っ!?わ、私が女性、だと・・・!?」
「そうだ」
「・・・っ!」
リグレットからすればまさか、と思われるような事をあっさりと言われた上に動揺の声を更に肯定され明らかにまた顔を赤らめる。



・・・リグレットは自身の考えをまとめきれていないところに普段女というより軍人として周りが見ていた為に女性として扱われる事はほぼ絶無に近かった。故にそう言った扱いはウッドロウという女性の扱いに長けた者が相手だったという事もあり、慣れていなかったリグレットにとって絶妙な不意打ちと言えた。



「君は軍人として厳格な態度で今まで勤めていたのだろう。だがいくら軍人とは言えただの人である事に変わりはない。いくら心を厳しく律しても君のその顔は軍人である前のただの1人の女性に見えたのだよ・・・まぁ下手に君の心に踏み込みすぎた私も悪いのだがね・・・すまなかった」
「っ・・・そんな、事はない・・・」
そんな様子にまたウッドロウは自身の考えを述べつつもやり過ぎたとの声を向けるが、リグレットは赤らめた頬を元に戻しながらもその胸の中で首を横にゆっくり振る・・・だがウッドロウは気付いていた、その声には力がなくある感情がこもっていた事を。
「私は、お前の言葉を聞いて思い出していた・・・閣下の下につく事を選んだ時、私が何のためにこの預言に満ちた世界を壊すのかを決めた時を・・・だが今にして思えば、私はその時点で道を誤っていたのかもしれないな・・・」
「・・・」
そして下を向きながら過去を語りだすリグレットだが自嘲気味な物も混ざった上で至上としてきたヴァンについた事を過ちと言うような内容に、ウッドロウは沈黙し話を聞く。
「・・・何をしていたのだろうな、私は・・・自分の事ばかりを考えて、他の事になど一切目を向けていなかった・・・預言への復讐を是として、過去から目を背けたまま何も考えずに進んでしまった・・・弟が、マルセルが、そんなことを望むはずがないということを考えもせず・・・ふふっ、笑ってしまうよ。自分の愚かさに・・・」
「人は過ちを犯す生き物だよ。程度の差はあれ完璧なままいれる人間などいない」
「わかってる、わかっているんだそんなこと!・・・でも私は・・・そんな自分を許せない・・・!」
更に自嘲を含ませ自身を責めるような言葉を吐く様子にウッドロウが慰めの言葉をかけるが、リグレットは自身への叱責を抑えた声ながらも吐き出す。
「・・・なら、やり直せばいい。その自分の許せない気持ちがあるならね」
「やり直せばいい、だと・・・?何を今更綺麗事を・・・!」
「綺麗事などではない」
「っ!」
その声にまた勧めの声を向けるウッドロウだったがそれを否定するような声を上げたリグレットに、真剣に怖い程の声色で一瞬で萎縮させる。
「何事もやらねば始まりもしないし終わりもしない。それは綺麗事などと言うような大層な物ではない。ただ自分の意志を持って行動出来るか、それだけの事だ・・・ましてや君は自身の行動を悔いているのだろう?やり直したくはないのか?」
「・・・やり、直したい。やり直したいに決まっているだろう・・・!」
「・・・そう、それでいいんだ」
「っ・・・!」
自身の持論を語りつつもその気持ちを問うとリグレットは力強くも素直に答え、ウッドロウはその答えで穏やかな笑顔を見せリグレットのアゴに手を添え優しくもその顔を自身に向けさせる・・・そこにあったのは、驚きを浮かべながらも涙が眦に溜まっていたリグレットの顔だった。








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