必然は偶然、偶然は必然 第八話
(・・・蔑まれたくない・・・今もその父の姿と考え方は心に深く根付いている、だからこそコイツはこう言えたのだろう・・・・・・それに比べて、私はどうだ?私は死の預言を詠まれても助けもしなかったダアトに、この世界に絶望して閣下と共に行動すると決めた。それがマルセルの為になると思っていた・・・だがマルセルは今の私の事を見たらどう思う?・・・ダメだ、どう考えても私をマルセルは褒めなどしない。むしろこの男の言うようマルセルは私を蔑む姿しか思い浮かばん・・・)
リグレットは足を下げた後、先のザオ砂漠と今のウッドロウの発言の中身を自身の悩みと照らし合わせ、ひどくうちひしがれていた自分がいることを自覚していた。
・・・リグレットが預言を嫌い、憎むようになった理由は最愛の弟を預言により見殺しにされたことにある。その預言を壊す為にリグレットはヴァンと行動すると決めた訳であるが、今のリグレットはウッドロウの言葉によりそれがただ自分本意の物なのではと思っていた。
最初は弟の餞の為と思っていたが、今はそれが自分がただ都合のいい言い訳として使っていたようにすらリグレットは思っていた。弟を理不尽な訳で殺された事への怒りを晴らす為、弟の為と名分を大層に掲げてその実で弟が望まないだろうことを自身はやっていたのだと・・・
「・・・そうやって父の事を胸に留めつつ、私は王となった。だからこそ私は過去を変えたいと思った事はあれど、前を向いて進もうと思ってやってきたのだよ」
「・・・っ・・・!」
と、自身が考えだけに没頭する間もなく穏やかに力のこもった声を向けられリグレットは声を詰まらせる。そんな姿にウッドロウは微笑みつつも、また穏やかに話を進める。
「それで私からも聞かせてもらうが、君はレプリカ大地計画を遂行するに辺りどのような気持ちで活動してきたのか教えてはくれないかい?私の過去に気持ちは正直に君に明かした。君の気持ちも正直に明かしてくれたら嬉しいのだが・・・どうかな?」
「・・・っ!」
その声はひたすらに優しい、ただ今のリグレットにとって自身の気持ちを吐露するには内心がぐちゃぐちゃになりすぎていてどう言えばいいのかわからなくなっていた。
「・・・」
「・・・うん」
・・・そんなものだからどう言おうか言葉が全く出ず、視線すら合わそうとしないリグレット。その様子にウッドロウは一つ笑みを消した後頷きを入れ・・・
‘ギュッ’
「・・・なっ!?」
・・・空いた分の距離を詰めリグレットを何も言わず、その胸に抱き締めた。いきなりで予想外な出来事に少し間を空けようやく自分の現状を理解したリグレットは、角度上で見えない顔を赤らめ動揺の声を上げた。
「きっ、貴様!?一体、何を・・・!?」
「君が泣きそうに見えたからだ」
「・・・え・・・!?」
すぐさま非難の声をぶつけようとするリグレットだったが、予想外の答えが返ってきたことにすぐに声を止めた。泣きそうに、という声に。
「・・・君が何か辛い過去を持っている事は端的にルーク君達から聞いてはいた。だがそれを下手につつくような質問をしていた事に君の表情を見て気付いた・・・すまなかった」
「っ!・・・なんで、なんでお前はそんなに優しいんだ・・・私は、私は敵だろう・・・!敵の泣き顔など、放っておけばいいだろう・・・!」
そのままの体勢で心底から済まなそうな表情で声を上げ謝罪するウッドロウに、リグレットはビクッと体を揺らしそれ以上に心が揺れていた事もあり本当に泣きそうな声で震え返す。
「・・・君は敵などではない、心が傷付いているただの一人の女性だ」
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リグレットは足を下げた後、先のザオ砂漠と今のウッドロウの発言の中身を自身の悩みと照らし合わせ、ひどくうちひしがれていた自分がいることを自覚していた。
・・・リグレットが預言を嫌い、憎むようになった理由は最愛の弟を預言により見殺しにされたことにある。その預言を壊す為にリグレットはヴァンと行動すると決めた訳であるが、今のリグレットはウッドロウの言葉によりそれがただ自分本意の物なのではと思っていた。
最初は弟の餞の為と思っていたが、今はそれが自分がただ都合のいい言い訳として使っていたようにすらリグレットは思っていた。弟を理不尽な訳で殺された事への怒りを晴らす為、弟の為と名分を大層に掲げてその実で弟が望まないだろうことを自身はやっていたのだと・・・
「・・・そうやって父の事を胸に留めつつ、私は王となった。だからこそ私は過去を変えたいと思った事はあれど、前を向いて進もうと思ってやってきたのだよ」
「・・・っ・・・!」
と、自身が考えだけに没頭する間もなく穏やかに力のこもった声を向けられリグレットは声を詰まらせる。そんな姿にウッドロウは微笑みつつも、また穏やかに話を進める。
「それで私からも聞かせてもらうが、君はレプリカ大地計画を遂行するに辺りどのような気持ちで活動してきたのか教えてはくれないかい?私の過去に気持ちは正直に君に明かした。君の気持ちも正直に明かしてくれたら嬉しいのだが・・・どうかな?」
「・・・っ!」
その声はひたすらに優しい、ただ今のリグレットにとって自身の気持ちを吐露するには内心がぐちゃぐちゃになりすぎていてどう言えばいいのかわからなくなっていた。
「・・・」
「・・・うん」
・・・そんなものだからどう言おうか言葉が全く出ず、視線すら合わそうとしないリグレット。その様子にウッドロウは一つ笑みを消した後頷きを入れ・・・
‘ギュッ’
「・・・なっ!?」
・・・空いた分の距離を詰めリグレットを何も言わず、その胸に抱き締めた。いきなりで予想外な出来事に少し間を空けようやく自分の現状を理解したリグレットは、角度上で見えない顔を赤らめ動揺の声を上げた。
「きっ、貴様!?一体、何を・・・!?」
「君が泣きそうに見えたからだ」
「・・・え・・・!?」
すぐさま非難の声をぶつけようとするリグレットだったが、予想外の答えが返ってきたことにすぐに声を止めた。泣きそうに、という声に。
「・・・君が何か辛い過去を持っている事は端的にルーク君達から聞いてはいた。だがそれを下手につつくような質問をしていた事に君の表情を見て気付いた・・・すまなかった」
「っ!・・・なんで、なんでお前はそんなに優しいんだ・・・私は、私は敵だろう・・・!敵の泣き顔など、放っておけばいいだろう・・・!」
そのままの体勢で心底から済まなそうな表情で声を上げ謝罪するウッドロウに、リグレットはビクッと体を揺らしそれ以上に心が揺れていた事もあり本当に泣きそうな声で震え返す。
「・・・君は敵などではない、心が傷付いているただの一人の女性だ」
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