必然は偶然、偶然は必然 第八話

・・・そんなルークとディムロスの会話が交わされた後二人はウッドロウにも少し気を張りながら、一同はデオ峠を進んでいく・・・だが中場の少し前程に入っても全く襲撃の気配はない。



「・・・来ないな」
「確かに・・・」
そんな状況にルークとディムロスは少し予想外の様子を浮かべ合う。
「ただ・・・少し考えたのだが、この現状ではリグレットは我々に接触しにくいのではないか?」
「接触しにくい?」
「あぁ」
しかし同時に理由に心当たりが浮かんだというディムロスにルークは興味を示す。
「彼女は我々と戦い痛い目に会っている。それもこのメンバーの半分に満たない数にだ。その上更にこの人数相手で容易に勝てるとは思ってないだろう」
「成程、まぁリグレットなら慎重になってもおかしくないな」
「また更に言うならまだ彼女は謡将に忠誠を誓っている身だ。私はその場にいたわけではないから知らないが、もしかしたら彼女はウッドロウの説得次第では離反する可能性もあるのだろう。それを彼女自身感じているだろうが、そうしたくないと考えてもいるだろう。そんな状況で元弟子のティアに会えばなし崩しに押されて離反してしまうかもしれない・・・そう考えていてもおかしくはない」
「ティアか・・・予想外なとこじゃあるけどそれも有り得ない事もないか・・・」
そのディムロスの二つの推測を聞き、ルークも小さくその推測を納得して聞き入る。



・・・戦力差と情、この2つを前にして下手な事をしたくないリグレットの気持ちは分からないでもないルーク。だからどうにかチャンスを待って冷静に事を自分のペースで運びたい、そう思っているのだとディムロスの言葉からルークは考えた。



「・・・ならリグレットを引き出すには隙を作ってやらないといけないか」
「ただ下手な隙の作り方をしたらリグレットは来ないだろう、それこそ余程都合のいい状況でなければまずな・・・」
だからそういった警戒を解くにはこちらもそれを見越した上での動きが必要だと考える二人はそこで歩きながら計らずも顔を見合わせる。
「ちょっとイオンに協力してもらって時間を取れるようにする。ウッドロウにはそっちから話してくれ」
「私もそうしようとしていた所だ、頼む」
「あぁ」
そんな二人の間に共通した考えが浮かんだ、あえて隙を作る為に動こうと。それを同時に言える辺り心が通じあっていて、迷いなく前を行くイオンに近付くルークの姿を見てディムロスも少し後方にいたウッドロウの方へと近づいていく・・・









・・・そしてイオンに「少し時間を取りたいから休憩の流れを作ってくれ」と耳打ちをしたルークの声に答え、イオンが以前のよう弱々しい声を上げ疲れを見せるとティア達はすぐさま休憩だと勝手に流れを作り峠の半ばで休憩という事になった。
(自分達が望んだ事とは言えよくもまぁ勝手に決めてくれるよな、全く)
昔の自分の行動上ブーブー言うのが普通だった為あえて気乗りしない様子を見せはしたものの、親善大使をないがしろに話を進めていく態度に地面に座っていたルークは改めて嘆息をしたくなる。
「・・・で、ルーク。時間を取りたいとはなんですか?」
そんなルークに事情を聞いていないイオンは静かに近寄り、訳を聞いてきた。
「ん~・・・多分ウッドロウが動くと思うから、それから説明した方がいいと思うけど・・・」
「・・・?」
しかしウッドロウがどんな反応するかが重要と考えるルークはすぐには即答せず、イオンが首を傾げると近くにいたウッドロウが二人に近づいてきて声をかける。
「導師、ルーク様。少し私は先の様子を見て参ります」
「・・・先、ですか?」
「えぇ、ちょっとした偵察です。すぐに戻りますのでよろしいですか?」
丁寧に臣下のよう声をかけるその姿にイオンは首を傾げるが、ウッドロウは偵察と言うと再度許可を求めてくる。
「イオン、話はディムロスに頼む・・・ならちょっと俺も連れてけ、なんか動きてーんだ」
「ルーク・・・わかりました、偵察お願いします」
「はっ。では行きましょう」
「おぉ」
その様子にルークはさっと小声をイオンに向けた後自分も行くと言うと、何らかの思惑があると察したイオンは快く了承しウッドロウの丁寧な誘いにルークも立ち上がる。
「ルーク、俺も行った方が・・・」
「ちょっと行くだけだ、大丈夫だっつーの。それにウッドロウが守ってくれるしな」
「・・・そうか」
そこにガイも加わろうとするがすかさず断りを入れたルークに、更に食らいつく様子もなく引き下がる。そんな姿を見てルークは冷ややかな目をしつつ「行くぞ」とウッドロウに向け言うと、さっさとその場から先に進んでいった・・・







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