必然は偶然、偶然は必然 第一話

・・・天地戦争が終結した後、自身の研究室にずっと閉じこもっていたハロルド。周りはそんな様子を見てミクトランを道連れに逝ってしまった兄のカーレルの死を悼み、悲嘆に暮れているのだと思っていた。

だが実際は違った。ハロルドは研究室にて自身の作品『超時空間超越装置1号ちゃん』、平たく言えば過去と未来を行き来出来る装置を作っていたのだ。

・・・そもそもそんな装置をハロルドが作る事にしたのは、ハロルドが言っていたカイル達のことを唐突に思い出した事にある。

・・・かつて神の起こした歴史改変という物を覆しに過去に来たカイル達に興味をそそられ、ハロルドもその旅に同行した。その旅の終わりで神を殺したカイル達は全てを忘れ、その後ハロルドも何も覚えておらずに天地戦争を終えたのだがそこでハロルドは突然カイル達との旅の事を思い出した。

・・・その時の記憶を思い出すに至るはっきりとした理由はハロルドにも検討はつかなかった。だがハロルドは別にそれでも全然構わなかった。何故ならかつての思い出が自身に戻って来た事はなによりの喜びであり、同時に自身の頭脳のみで神の力を凌駕する機会を得られた事に。

・・・そして早速時空移動が出来る装置作りに取り掛かり作成成功に至った訳だが、ペンダント型装置にした理由は自身の意志を示せばそれだけで時空を超えられるような物を科学で作れると示したかったからである。リアラやエルレインのように神の化身でもなければ出来ないような奇跡ではなく、誰にでも使える物に仕立て上げる事が出来るのが科学だと言えるように・・・






「ふんふ~ん♪置き手紙も書いた事だし、後は行くばかりね~♪よ~っし・・・」
ハロルドは机の上に『しばらくしたら戻って来るから心配いらないわよ』といった中身の手紙を置くと部屋の中央でペンダントを首にかけ、祈るように目を閉じ手を組む。そんなふうにするのはハロルドいわく、祈るような姿をした方がらしいからという理由の為である。
「・・・ハロルド、入るぞ」
・・・と、ハロルドの研究室の扉を開けてディムロスが入って来た。
「・・・何をしているんだ、お前は」
「んー、実験」
そしてハロルドの姿を目視するなり顔をしかめるディムロスの声に、なんでもないようハロルドは答え返す。
「・・・最近姿を見せないから様子を見に来たが、どうやら心配は無用のようだったな」
「そういうこと。ほら行った行った。集中力が途切れると実験出来ないんだか・・・あら?」
そんな答えにディムロスはここに来た用件を言い、ハロルドは邪魔者を追い払うような声を上げる。だがその時、ハロルドは自身のペンダント型装置の異変を目撃した。
‘キイィィィィィィン’
「何これ・・・いきなり光だしたけど、止まりなさいよぉっ!止まりなさいってば!・・・もしかしてこれって、暴走ぉっ!?」
「何!?」
・・・ペンダントからはとめどなく光が溢れだし、ハロルドの止まれという念の制止も聞かない。必死に叫ぶハロルドは唐突に暴走だと叫び、ディムロスはハロルドのろくでもない時の実験結果を知っている為表情が一瞬にして強張る。






・・・そして異次元空間にも異変が起こる。
『なっ!?』
「どうした、ローレライ!?」
光を発生させて包み込ませきる刹那、ローレライの驚きの声にウッドロウがどうしたと問う。
『誰かが時空移動をしようとしている!そのエネルギーが我のオールドラントに行く為の扉を開く力とぶつかってきた!・・・このままでは我らはそのエネルギーと引き合い、衝突して共倒れになりどこかもわからんような遠くに飛ばされかねん!』
『何!?』
『幸いそのエネルギーは力にしてみれば我の方が上回る!多少問題は起こるやもしれんが、そのエネルギーを取り込みオールドラントまでそなたらを送り届ける!その方がまだ問題は少ないだろうから、起こった事態に対しては我が責任を持つ!だから気にず、行くぞっ!』
「・・・わかった、ローレライ!」
余程差し迫った状態だと分かるよう早口で述べるローレライの焦りから、ウッドロウはもたもたする方が危ないのだと感じ了承をハッキリ返す。



・・・そして光に包まれ光が消え去った時にはウッドロウとイクティノスの姿はもうそこにはなかった・・・






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