必然は偶然、偶然は必然 第八話

・・・そして船に乗ったルーク達だが、その部屋には毎度の如くティア達の姿はなかった。



「・・・ではナタリアはもうバチカルに送ったんですね?」
「あぁ、流石に3回目を起こす気のないようにしておいたから大丈夫だと思うぜ。その上でメリルってバラされているかどうか・・・その辺りは定かじゃないけどな」
しかしティア達がいないことの方が喜ばしいルーク達なので、その辺りは今更だとナタリアの現状を報告し終える。
「それで、イオンの方はどうだ?」
「えぇ、ダアトにはもうこれまでの経緯を説明した手紙を送りました。あの樽豚がいない上に不信の種は蒔いておきましたから、僕の権限があってトリトハイム達の決断があればもう十分にイケると思いますよ」
「そうか、なら後は」
『アクゼリュスの事であろう、ルーク』
「おわっ、ローレライ!いきなりだな、また!」
そこからイオンの事を聞くと順調と返されならばと次の事を口にする前にイクティノスからローレライが声を上げ、ルークは予告無しに話し掛けられバッと驚き身を引く。
「随分といきなりだね、ローレライ」
『すまぬな。だがそろそろアクゼリュスに到着とありそなたらのみで集まる機会などもう無さそうなので声をかけた』
「それで、アクゼリュスの事とは?」
そんなルークに代わりウッドロウがローレライに落ち着いて接触の訳のアクゼリュスの事を問う。
『あぁ、アクゼリュスの障気の件だが今は我が出来る限りは抑えている。今は以前程は障気は濃くはない。今の調子で行けばまだいくらかはマシな状況で住民救助が出来るだろう』
「ん?そんなことしてたのか、ローレライ?」
『そうだ。本来ならアクゼリュスに蔓延する障気を全て超振動で中和したい所だが、そうしてもまたパッセージリングから障気が溢れてくるだけであるし、下手を打てばアクゼリュス救援を住民が取り下げる可能性もないわけではないからな。根本的な問題で言うならもうアクゼリュスは液状化した大地をどうにかしない限りはパッセージリングを操作して魔界に降下させてもどっちみち崩壊する以外に末路はない。そのような大地に人々を残す訳にはいかん』
「・・・成程、回りくどい手段には思えるがもしもを考えればそうそう都合よくばかりはいかせられないのも事実か・・・」
そのウッドロウに自身が行った処置をローレライが伝えると、ウッドロウは詳しく話を吟味した上でそれがいいと小さく頷く。



・・・最良のみを求めた結果が最良になるとは限らない。むしろ時として最悪の結果を招く事すら有り得てしまう。だから清濁合わせて飲み込んで判断してこそ最良と呼べずとも最悪の状況を避ける事が出来る。



もし障気がなくなったならまた住民はアクゼリュスに居続ける道を選ぶやもしれない、それは液状化した大地を固める時間のない今では無理がある。そう思えばウッドロウもだが、ルーク達もローレライの言葉に納得する以外になかった。
『とは言え我が施した処置はあくまでも気休めだ。出来るなら早めに住民を救出した上で神託の盾を退けアクゼリュスから遠ざかった方がいい。その上でマルクトに住民を渡すべきだ』
「ですね・・・ただそれならそろそろマルクトにもある程度は情報を公開して事態に対して協力していただかないといけませんね・・・」
「そうだね。けどどうする?今ジェイドに話を通した所で彼はおそらく聞き入れてはくれまい、不確実な情報は確実と言えるくらいに確定してからでなければ受け流すだろう・・・だがそれでは遅れを取ってしまう、それこそ全てにおいて致命的な遅れをね」
その上で急ぐべきだと告げるローレライにイオンは同意しつつも考え込み、ウッドロウはその悩みの元であるジェイドのその思考回路の厄介さからジェイドに協力を申し出るのはまずいと苦く呟く。









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