必然は偶然、偶然は必然 第八話

・・・そんな気配を後ろに残しつつ、ルーク達はどんどんと先を行く。
「どちらまで行きますの、ルーク?」
「ん・・・すぐそこだよ、ほら」
だが行き先をはっきりしないルークにナタリアは首を傾げるが、ルークは普通に振る舞いつつそこだと指を指す。そこはケセドニア内にあるマルクトとキムラスカの国境を分かつ線をキムラスカ側に越えた場所。
「・・・このような所で何を?」
だが何かをするには何もない指を指されたその場に立ったナタリアはなんなのかとまた首を傾げる。



「・・・今だ!捕らえろ!」



「えっ・・・っ、きゃあっ!?何をするのです!」
・・・その瞬間ルークは荘厳な声で命令するような声を上げると、どこからともなく辺りに潜んでいたキムラスカ兵士がナタリアを取り囲み瞬く間に周囲を囲む。そのいきなりの行動にナタリアは動揺するが、周りを隙間なく囲まれている為に弓を構える事も出来ない。
「騒ぐな、ナタリア。訳なら領事館で説明してやる・・・連れていけ!」
「はっ!」
「ちょっとルーク・・・!」
そんなナタリアにギャアギャア無駄に騒ぐ暇を与えまいと素早く指示を出すルークに兵士はナタリアの声など全く意に介さず、ナタリアを強引に連れていく。
「さて・・・行くか」
その光景を冷ややかに見据えながらナタリアを凹まそうと、ルークは二人を引き連れその後を付いていく・・・






・・・そして場所は戻り再び領事館の中。ナタリアは備え付けられたソファーに座らされるが、その両脇を直立不動でキムラスカ兵士が見張って固める。その前にはルーク達3人が立っている。
「ルーク!何故このような事をするのですか!?」
「何故?・・・おかしなことを聞くな、ナタリア。俺はインゴベルト陛下の臣下に恥じない行動をしているんだが?」
「っ!?・・・お父様の、臣下・・・?」
場が変わり対談の形になったところで早速ナタリアは烈火の如く座ったまま勢いよく噛みついて来るが、ルークは反対に静水が如く立ったままゆっくり紡ぐ。国に従う者として正しい在り方を。
「一応俺は次代のキムラスカ王になるだろう事になっているが、今の時点では俺はインゴベルト陛下に従う一臣下に過ぎない。それは陛下の娘と言ってもお前は王ではなく王女という立場から、お前も一臣下に過ぎない。それで俺はそんな一臣下の身分もあるから陛下の命令に従ってる訳だけど、本来お前もそうやって陛下の命に従わなきゃいけねぇのはわからないか?」
「それは・・・だ、だからこうして私個人で来ているのではありませんか!」
「だからそんな個人で来たお前を受け入れろ、と?んなこと出来っかよ、そうしたら俺まで陛下の命に背く事になんだからよ。それもお前のせいで」
「えっ・・・!?」
ちゃんとした臣下の在り方を説くルークにナタリアはだからそういったしがらみを無くして来たんだと苦し紛れに叫ぶが、それがダメなんだとルークという臣下の立場で言われ予想外だと驚き止まる。
「なんだかんだでお前はちゃんと陛下の意向を受け取る事もなくここまで勝手に来た、それは否定出来ない。そんなお前を俺が連れていけばどんな言い訳したって少なからず言われんだぞ。お前もナタリアがアクゼリュスに連れていく事を了承した・・・つまりは陛下の意向に反する行動を取ったんだと」
「そ、それは・・・私が言った「から無罪じゃねぇんだ、連れていく事を認めたらほだされただとか仕方なくだとか言えるようなもんじゃねぇよ。犯罪犯しても同情を誘う身の上話すりゃ無罪放免、なんて判決が出た事あるか?・・・あるわけねぇだろ、なのにそれと同じことお前は言ってんだよ」・・・!」



・・・あくまでナタリアという本丸を攻めても自分は間違ってないと言い張るから効果は薄い。だから自身も含めた周りの人間の立場を持って外堀を埋めてから、守りを崩して攻め入る。



そんなルークの巧みな自身の立場のまずさを持って話す声にナタリアはアワアワとしだすが、間髪入れず割り込ませた声にビクッと体を揺らす。










6/23ページ
スキ