必然は偶然、偶然は必然 第七話

(・・・すげーな、ウッドロウ・・・あんなリグレットの声聞いたの初めてだ、俺・・・)
・・・そんな二人の様子を前を歩いていたルークは盗み聞きしていたが、そのウッドロウの弁の立ちように内心舌を巻いていた。
(あまり直接的に言うとリグレットの性格からして逆鱗に触れるし、かといって遠回し過ぎても言いたい事がボヤける・・・それを正確に見極めて言ってるからすげーよなー・・・)
自分だったらあそこまで見事に心を揺らせないと、一時期より落ち着いたとは言えがむしゃらだった自身にふとルークは微笑を浮かべる。



・・・リグレットの心は毅然とした態度とは裏腹に、かなり微妙なバランスで成り立って構成されていた。それこそちょっと余計な所を突けばそれだけで崩れ落ちるくらいに。

それにはリグレットの生い立ちがあるからなのだが、それを無理矢理暴こうとしたところで余計に信頼など得られるはずもない。だからウッドロウが取ったのは無理にキツい言葉で心を攻めるのではなく、かつて平和だった頃を思い出させるかのよう穏やかに語りかける事だった。

・・・心を攻めるを上計、城を攻めるを下計と言うが力押しで無理矢理得た物には少なからず犠牲及びに再び奪われる危険性がある。故に城を降すのではなく兵士の心を心底から降せばそのような不利が無くなることからそのような言葉が生まれたのであるが、ウッドロウはそれを上手く体現していた。無理矢理心の城をぶち壊そうとしているのではなく、自ら城の門を開けさせるように持っていく事で・・・



(・・・これは手伝いたい所だけど、下手したら余計な事になっかもしんねーし無理にはやらない方がいいな・・・)
しかしそう出来るのは老練な経験を持ち元来の性格が穏やかなウッドロウだからであって、自分が真似をすれば変な事になりかねない。そう思ったルークは何か言われたら手伝うくらいでいいかと思い、先を進んでいく・・・















・・・そして時間が経ちザオ砂漠をある程度歩いた時にルーク達はイオン達の姿を目撃した、ただそこには神託の盾兵士の姿が何人か程あるが。
「ルーク!」
「おう、無事だったか?」
「えぇ、貴方達がリグレットの身柄と引き換えに神託の盾を引かせてくれたおかげで」
「「・・・っ」」
そこから互いに気付いて近付き合流に笑顔を見せるイオンだが、そのイオンから自身の失態だとリグレットは苦い表情になる。そして何故かその苦い表情にティアは微妙な表情になる。
「・・・で、コイツらは?」
「あぁ、彼らは僕達と貴方達が合流したらリグレットを引き渡すように神託の盾がつけた兵士ですよ。僕達が約束を反故にしないように、とね」
「成程な」
そして何故か一緒にいた神託の盾の事を聞くと、六神将の差し金だとイオンが言いルークは納得する・・・まぁ判断自体は間違ってはいないが、ここで兵士達が殺される可能性を考えてない人選はいかがなものかともルークは思っていた。自分達の力は少なからず向こうも感じているだろうに、と。
「んじゃお迎えもあることだし、行っていいぜ」
「ではまた縁があれば会おう」
「・・・」
しかしそうしても他の六神将とリグレットの不興を買うだけだとあっさりルークは別れを口にし、続いたウッドロウの再会を願うような声にリグレットは迷いを浮かべつつも一瞥をウッドロウに残し神託の盾とともにその場を去っていく・・・









21/23ページ
スキ