時代と焔の守り手は龍の剣 第七話

「・・・とりあえず、だ。あまりルークのあの状態は好ましい物ではないな」
「えぇ、あの様子ではヴァン謡将の言葉を盲目に受け止めすぎていますね・・・その上あの内容は考えられる中身で現実を伴っているだけに、否定するにも否定する材料がありません。このまま行けば彼はヴァン謡将の言うがままに行動するでしょうね・・・」
ホドの話からルークの話に変更した二人は揃って厳しい顔を突き合わせる。



・・・ヴァンがルークに話した内容、キムラスカがルークをバチカルに帰れば飼い殺しにするだろうという物は超振動という能力が真実味に拍車をかけていた。誰だって利用されるだけの軟禁に自ら身を投じるなどやりたくないことだ、それから信頼出来る者が救いだしてくれるのなら普通はすがりたくなる物だ。希望のない状態からの脱却に。



「・・・どのようにされるのですか?元々の貴方のやろうとしていたこととは大分かけ離れているのでしょう、今の事態は。場合によっては彼を・・・」
「それは正直どうするべきかを今も考えている。ルークを産み出したのはヴァンであり、本来ルークの役目を担うのはアッシュだ。ルークに関してはまだ見極めの時間が欲しいと俺は思っている」
「・・・随分と貴方はルークには気を遣っているのですね」
「・・・ふぅ」
その状態をいかにすべきか。比古清十郎にジェイドはそう問うが時間が欲しいと言われ、暗に似合わないと言っているようなジェイドの声にそっと息を吐く。
「・・・俺もれっきとした人間だ、感情論を抜きにした理屈のみを頼りに生きてきた訳ではない。ましてや飛天御剣流は派閥に囚われん自由を持った正義の為の剣だ、何も知らんガキを無差別に殺す為の剣ではない。ましてや利用されているだけなら尚更の事だ」
「成程、理念を出来る限り守りたい・・・そういう事ですか・・・」
「そうだ・・・ただどうにもならん場合は手をかけることも理解はしている、ルークも・・・そしてアッシュも」
「・・・そうですか」
息を吐いた後出てきた理念を話す比古清十郎だが、ジェイドはその様子からなんだかんだと情を思わせる物を感じ取る。だが更に続いた言葉にそんな情をもしもの時はためらいなく両断すると確固たる決意がこもったものを受け、ジェイドはただ眼鏡を押さえながらの一言しか返せない。
「とりあえずはまだ様子見でいいと思うが、お前はどうするべきだと考えている?」
「・・・私も今のところはそれでいいと思います。もうピオニー陛下にもあの手紙は届いてはいるでしょうし、マルクトがどのような対応をするか・・・その返事は中身を検閲される恐れのあるバチカルにではなく、またマルクトに戻る為に通る必要のあるケセドニアに送って来るでしょうし・・・それまではマルクトの決断を反映した上で判断をするためにも、ね」
「そうか、まぁそれが妥当な所だろう」
すると今度は逆に比古清十郎から質問され、ジェイドはそのまま多少考え込みながらも眼鏡から手をどけつつケセドニアまでは様子見でいいと大方の比古清十郎との同調を告げる。
「ただ最終的に判断を下す時間としてはデオ峠辺りかと。ケセドニアでマルクトの判断を仰ぎすぐさま行動に移せば大事になるのは目に見えています。物事を万事うまく進めるにはあまり人の目がないほうがよろしいと思いますし、すぐに決断を下すよりは時間を置いた方が多少は考える時間もあります」
「・・・そうだな、デオ峠か・・・それがちょうどいい頃合いか」
ただ様子見の限界の時間はデオ峠、ジェイドから理由付けされた時間制限に比古清十郎もだろうなと納得する。







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