時代と焔の守り手は龍の剣 第七話

そしてバチカルに向かう船の中、甲板の上で進路方向を見ながら比古清十郎とジェイドは真剣に話を繰り広げていた。



「改めてお聞きしますが先程の方々は?」
「暗闇の夢は表向きの姿だが、その裏の顔はお前も知っている。漆黒の翼だ、名前くらいは知っているだろう」
「・・・えぇ、まぁ」
話の切り出しにノワール達の事を聞くジェイドに比古清十郎は鋭い皮肉を効かせた言葉で返し、ジェイドは眼鏡を押さえる動作で顔を隠しながら微妙そうに肯定する。
「・・・ですが何故そのような方々と貴方はお知り合いなのですか?」
「・・・まぁ今なら話してもいいだろう。奴らも俺と同じでホド出身の人間だ。ホドが崩落した時俺はホドを出ていたがその時は近くにいてな、避難した人間達の中に奴らがいたんだ。それでそれ以来奴らとの縁が続いている」
「ホドの生き残り、ですか・・・」
しかし気を取り直しその関係性を問うジェイドだが、ホドと出された事でジェイドは再び微妙な気持ちで顔を背ける。
「それで俺はしばらく話していく内に協力者が必要だと思っていたこともあり、事の次第を奴らにも話した。それで俺に協力してくれることになった訳だ、だから事が終わるまでは奴らを泳がせろ。今ならお前はまだ奴らの正体を知らないで通せるだろう」
「・・・それからは別に彼女達を捕まえてもいいと言っているように聞こえますが、いいのですか?貴方の協力者なのでしょう?」
「・・・勘違いするな、奴らが今漆黒の翼として活動しているのは俺の指図ではない。奴ら自身の意志によるものだ」
だが比古清十郎から事が終わるまでは手を出すなと言われ仲間ではないのかとジェイドは関係を疑う声を出すが、比古清十郎は厳しい目付きをして仲間ではないと否定する。
「そもそも俺が奴らに協力してもらうように頼もうと思ったのは、ホドを消滅させるまでに至った世界に対してのせめてもの抵抗の運動をしてきた奴らなら俺のやろうとしていることに少なからず共感すると感じたからだ。そして全てが終わればその関係性はもう終わる、その後まだ漆黒の翼を続けるかどうかなど俺は知ったことではない」
「・・・だから後は勝手にしろと?」
「そうだ」
その関係はあくまでも事が終わるまで。徹底したビジネスライクな姿勢で関係性を語る比古清十郎に、ジェイドは眉間に手を置く。
「・・・彼女達が漆黒の翼として活動しないようにするには、私達が以降の治世でまともな体制を敷くことが必要になりますね・・・」
「随分と力が入った物言いだな」
「えぇ、私も少なからずホドの崩落に関わった身ですのでそう言った話を聞きますと・・・ね」
「・・・そうか」
そのジェイドからこぼれでた言葉には確かな決意がこもっている。それを感じた比古清十郎だがその後のそうなる心理に至った理由を推測出来る重い言葉を聞き、下手に追及せず終わらせる。
「まぁそれはもういい。今はヴァンがこれから起こすだろう行動についてどうするかだ、ルークについての件も併せて話すぞ」
「えぇ、そうですね」
そこからこれまた珍しく空気を変える為に話題転換をした比古清十郎に、ジェイドもその気遣いに答え手をどかし頷く。









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