時代と焔の守り手は龍の剣 第七話

・・・そして比古清十郎が案内されたのは国境をまたぐように居を構えるバー。その中のバーの一角にあるテーブルにて、四人は椅子に腰を据える。
「センセイはいつもの酒でいいかい?」
「あぁ、それでいい」
「済まないねぇ、ちょっといいかい?」
対面上に座ったノワールから酒を飲むかと問われ、平然と是と答えるとノワールは従業員を呼び各々の酒の注文を始める。



・・・バーという酒が主要の売り上げを占める場にて、大人と呼べる人間達が酒すら飲まず何も頼まず静かに話し合うなど普通は有り得ない光景。故に酒を頼み自然の流れで話し合うよう、場の人間は自然と酒を頼む物だと考えていた。



「・・・じゃあ酒も来た事だし、話そうか」
そして従業員から比古清十郎に酒がホド独特の作りの酒瓶、他の三人はグラスで持って来られた酒を確認するとノワールは話の開始を告げる。












・・・そして比古清十郎によって話された今までの旅の経緯。
「・・・という訳だ」
「・・・はぁ、なんというか・・・キナ臭さと胡散臭さ、それとアホくささが同居した話だねぇ・・・」
「言いたいことはわからんでもない、だがこれは紛れもなく本当の話だ」
話を終えその感想を複雑そうに溜め息を吐きながら告げるノワールと同じように表情を落とす連れの男二人に、比古清十郎は酒を呑みながら嘘ではないと告げる。
「・・・まぁそれならちょうどよかったかねぇ。さっき私達に神託の盾から依頼が来てねぇ」
「神託の盾からだと?」
と、ノワールは思い出したように神託の盾の依頼を口にし比古清十郎の興味を引く。
「ちょっとね、簡単に言うと導師をさらうように言われたのさ」
「導師を・・・?」
「そう。段取りで言ったらセンセイ達がバチカルに行って、その後隙を見て導師をさらうっていう至ってシンプルな物さ。手段は私らに任せられたけど、そんな話を聞くと素直に従っていいものとは思えないねぇ・・・」
その依頼の内容はイオンの誘拐。だがそれを受けていいものではないなと考えて話すノワールは真剣な顔で横を見る。
「・・・いや、そのまま神託の盾の依頼を受けてくれて構わん」
「・・・は?」
だが比古清十郎は少し考え込むとそうしなくていいと言い、ノワールは比古清十郎の方を意外そうに振り向く。
「今はまだ神託の盾の思惑が外れていないと思わせない方がいい。それに導師をさらって神託の盾がやろうとしていることも大体想像がつく。まだ差し迫った事態には陥らんことは予想がつくから、今は怪しまれない程度にそのまま神託の盾の依頼を受けてくれ」
「・・・わかったよ」
そうしてもらう為に自身の根拠を語る比古清十郎に、ノワールは真剣に頷いて返す。
「では俺は奴らと合流する。そろそろ時間もいい頃合いだろうからな」
「あぁ、もうそんな時間か」
そして椅子から立ち上がり酒瓶を持ちながら担ぐ比古清十郎は時間の事を言い、ノワールも了承する。
「後はまたバチカルで話す、どうせお前達も行くのだろう・・・じゃあな、これはもらっていく」
「あぁ、またね」
しばしの別れを口にし比古清十郎は酒を少し相手の方に見せると、バーから颯爽と立ち去っていく。



「・・・お、来た来た」
そしてケセドニアの街の一角、ひとかたまりになっていたルーク達の元に比古清十郎は合流する。
「それはなんでしょうか?」
「奴らから手土産にもらった酒だ、それより早く行くぞ。船の時間は大丈夫なのか?」
「えぇ、そろそろいい時間のはずです。行きましょうか」
「そうしようぜ」
そこからジェイドが近付いてきた比古清十郎の手元の酒の事を切り出し、他愛ない会話から船に乗ろうとルークの合図を皮切りに皆が港の方へと向かい出す・・・






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