時代と焔の守り手は龍の剣 第一話

「・・・はい、確かに陶器は受け取りました。今回は三点で出来も相変わらずですので、見立てとしてはこれくらいです」
「ふん・・・まぁ妥当だな。で、これはどこに卸すんだ?」
「グランコクマです。前回はキムラスカに売りましたからね。今度はマルクトに売らないと顰蹙を買うもんで。へへへ・・・」
二人の住まう部屋に中年男性の商人が入っている。商人は陶器の代金金額の書かれた紙を持ちながら、比古清十郎と話しながら頬を緩ませ、いやらしい笑いを見せる。



・・・比古清十郎も人付き合いが悪いとは言え、伊達に四十三歳まで生きてこの小屋で暮らしている訳ではない。その気性なだけに付き合える人間も限られてくるが、それなりに付き合いのある人間もいることはいる。この商人はその内の一人だ。

見た目からはあまり普通に接するにはいやらしい容貌ではあるが商人としての力量は確かで人を見極める力もあり、その点で比古清十郎は自らが作る陶器を卸す時はこの商人に卸す事が多い。下手に隠し立てをせず自らの作品に妥当な判断を下すこの商人を少なからず、比古清十郎が信頼している証だ。

・・・尚、金額が書かれた紙に明らかに一般の人間がまともに稼げるような金額が書かれていた事はまずない。セカンが大分まともに暮らせるようになってこの金額を見たとき、目を疑ってしまって混乱したのは余談である。



「・・・行きましたね」
「ああ、そうだな」
商品である陶器をもらってホクホク顔の商人を玄関で見送り、どこか覚悟を決めた様子のセカンは比古清十郎に振り返る。
「じゃあ、やりましょうか。稽古・・・」
明らかに先程のやり取りとは違い、萎えた様子のセカン。まぁ未だ本気でないのに敵わない相手に本気で稽古の相手をされると言われたのだ、ほぼ理不尽な形で。そう考えれば微妙な表情になるのは当然だろう。
「ああ、それはいい」
「・・・え?」
だがそれを相手から否定され、セカンは呆気に取られる。
「商人から少し気になる情報を耳にした。マルクト側からアクゼリュスに行くための橋が壊れたらしい。従ってマルクトからアクゼリュスへは通れん」
「えっ、それって・・・」
先程の商人から比古清十郎が世間話がてら聞いたのはマルクトからアクゼリュスへの通行不能、そう聞きセカンは一瞬にして緊迫した様子を見せる。
「俺はしばらくここで様子を見ておく。お前は旅券を渡すから少しエンゲーブに行って来い。おそらくきっかけは・・・マルクトからだ」
「はい・・・わかりました」
きつい目つきを更にきつくした目つきの比古清十郎に真剣にエンゲーブ行きを命じられ、セカンはしっかりと頷く。
すると、比古清十郎は小屋の奥に行き壁際に立て掛けられていた刀を手に取り戻って来る。
「一応逆刃刀を持っていけ。ないとは思うが、村の中で絡まれた場合はこっちを使え。村の中で殺したら面倒だからな、叩き伏せるくらいにしておけ」
「そんなことしませんよ・・・でも一応もらっておきます」
ずいっと目の前に出された逆刃刀にセカンは苦笑しながらもそれを受け取り、腰に元々あった刀の横に納める。






その時、二人は知らなかった。この逆刃刀が思いもよらぬ形で役に立つ事になることを・・・









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