時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「あれでいいんですよね?」
「あぁ、一々導師に付き合う道理は俺にもお前にも・・・ルークにもない」
・・・そして国境に戻る道を歩く中、比古清十郎とジェイドは辺りを注視しながら二人横並びに静かに会話する。辺りを注視しているのは後ろの暗くうつむいたルークを下手に突かないよう、気を使っているためだ。
「導師は自身が危険に飛び込む事がどんな影響があるかを全く考えようとしていない。それでどのような悪い結果が訪れても導師は嘆くだけで自己満足で終わり、真の意味で取った行動を反省しようとしない。そんな奴の尻拭いは俺はする気はない」
「手厳しいですね」
比古清十郎は静かにイオンを酷評し、ジェイドは言葉だけたしなめつつ声色に非難を含ませずにいる。



・・・比古清十郎から見てイオンは真の意味で自身を省みれない人物だと考えている。例えばコーラル城に行き自身のみが助かりルークが死んだなら、悲しみはするだろうが似たような事例がその後起こればイオンはまた何かを犠牲にすることを考えず誰かを巻き込んだ行動を取るだろう。自身は戦えないというのに、誰かを戦わせる形で・・・比古清十郎はそんな都合のいい立場で無謀な決断を下すような人間に付き合う気は更々なかった。



「・・・それよりも俺が気になるのはあの使用人の方だ」
「ガイですか?」
・・・と、比古清十郎はイオンからガイへと話題を転換する。
「ここに来る前に多少使用人も戦っただろう。あの時動きを見ていたが、あれはホドの一部の人間にしか伝承されてない剣術のシグムント流だ」
「シグムント流・・・何故それを?」
「俺は元々ホドの人間だ、それくらいの知識はある・・・使用人は間違いなくホドの人間だ、あの剣術はガルディオスかそれに近しい者以外には使えんからな」
「ガルディオス、ですか・・・」
シグムント流とガルディオス、ホドに関する2つの単語を繋げられジェイドは考えるよう手をアゴに添える。



・・・キレる前にほんの少しだけ戦った姿から、比古清十郎はガイはホドの人間だと確信した。その剣筋がシグムント流だと核心したが故に。



「そう考えればあの使用人の正体はともかくとしても、その目的は容易に想像出来る」
「どう考えても良からぬ目的以外は考えられませんね・・・」
更に比古清十郎からガイの目的を想像させられる話を聞き、ジェイドは悪い目的以外ないと重く呟く。
「いつからファブレの家にいたのかは知らんが、まず言えるのはこのままにしていればルークの命が危ぶまれる可能性が高いと言う事だ」
「・・・ですが正直わかりません。先程ガイがルークに詰め寄られた時、彼は動揺した様子を見せていました。あれが演技かどうか、判断が難しい処ですね・・・」
その可能性をハッキリと口にする比古清十郎に、ジェイドはそれにしてはガイの行動が妙だと考える。
「・・・演技だと言うなら堂に入った物だが、素ならあれはあれでどうとも言えん微妙な事をしているな。使用人としてはあまりにも使い物にならんことを堂々としている。それでルークの信頼を勝ち取っていると公言しているようなものだからな・・・ルークがレプリカだと言う事を差し引いて見ても、徹底した態度を取っていない奴のボロを俺は明かしただけだからあれが演技か素かなんかはどうでもいいことだ」
「・・・確かにそうですね・・・」
だが比古清十郎からどうでもいいと言われジェイドは何とも言えない様子で頷く。








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