時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「・・・返す言葉もないか。主を主と思っていない行動を取っているようなお前のことだ、主の意志や安全など心底どうでもいいと思ったから容易に導師の味方についたのだろう?」
「!違っ・・・!」
「・・・だったら、ガイ・・・なんで俺の事を考えずに、コーラル城に行くことを勧めるんだよ・・・!?」
「っ・・・!」
そんな動揺を突く比古清十郎の言葉にガイは慌てて否定の言葉を上げようとするが、うつむき表情に暗さを見せるルークの辛そうに絞り出される声にすぐに言葉を失う。
「カクノシンの言う通り、コーラル城には神託の盾がどれだけいるかもわからねぇんだぞ・・・俺達がコーラル城に行ったらガイは俺を絶対に守りきれるなんて保証が出来んのかよ・・・!?」
「・・・それは・・・」
・・・ルークから紡がれる言葉には自身の身をかえりみてくれなかったガイに対してのやり場のない怒りが溢れんばかりに満ちている。その感情をぶつけられ言い訳も思い付かないようで、ガイは視線を反らして口を濁す。
「・・・答えられねぇのかよ・・・!なんでだよ、ガイ!」
「・・・っ」
そんな様子にとうとう感情の抑えが全くきかなくなったルークは顔を勢いよく上げ、ガイの襟を掴み涙を瞳に浮かべながら激昂の声をぶつける。ガイはそれでも視線をルークに向けられない。
「もういいだろう、それ以上言ってやるな」
「なんでだよ!」
そんな二人を見かねた訳ではないが、比古清十郎がそのルークの手を取り制止しろと言う。ルークは比古清十郎に顔を向け直し、食ってかかる。
「行きたいと言っている人間を別に止める意味はないだろう。それにコイツは何も考えていなかった、お前の事を含め何もだ。そんな奴に訳を問うなど、問うだけ時間の無駄だ。さっさとコーラル城に送り出せばいい、お前に対しての話などコイツの中にはないんだからな」
「!」
そんなルークに対して言いはなった比古清十郎の声は、ガイの痛い核心をがっと抉り表情に一気に汗を浮かべさせる。
「心配はいらん。コイツがコーラル城から戻ってくるかは知らんが、バチカルに行くまでは代わりとして俺がお前を守ってやる。まぁ俺の腕を信用できんと言うなら、別に構わんが・・・」
「・・・いや、そんなことはない。よろしく・・・頼む」
「!」
そんなガイを更に追い込むよう続いた比古清十郎のルークへの申し出にルークはゆっくりと考えしっかりと頷きガイを驚愕させるが、ルークはガイに全く視線を向けず出口へ歩き出す。
「・・・じゃあ国境に戻ろうぜ。後はヴァン師匠達と・・・ガイが勝手に事件を解決するだろうしな」
「ああ、そうするか」
ルークの去り際の冷めた言葉がハッキリとガイにぶつけられガイが青ざめた様子を見せる中、比古清十郎は頷きながらもルークの後を追う。
「では私も行きますが・・・イオン様、少しの間猶予を差し上げます。我々に付いて来ていただかなくともこの港に留まっていただくなら引き続き和平の仲介をお願いするに足ると私は判断します。ですがコーラル城に行くというのであれば先程言ったよう、仲介の依頼は破棄させていただきます。それはゆめゆめお忘れなきよう・・・では」
「・・・っ!」
そしてジェイドもイオンに2つの選択肢の提示をしてから、先の二人を追いかけつつ歩いていく。その声にイオンは何も言えずうつむくばかりだった・・・








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