「私達の役目はあくまでも和平に向かうことですが、それはイオン様も同様です。そしてあくまでも和平に向かう一行の中でどのような行動を取るか、その権限はマルクトからキムラスカに向かうと決めたマルクトの代表の私にあります。それでマルクトは協力をイオン様に申し出はしましたが、私が皇帝の名代と言う名を掲げている通り私の言葉はピオニー陛下の意志という事になります。それはお分かりですね？」
「・・・はい」
軍人という立場ながらも今は皇帝名代と言う、皇帝の意志を汲んだ存在。前置きとしてそう出した言葉に続かせ、ジェイドは更に話を続ける。
「私は一刻も早くキムラスカにつつがなく向かいたいと思っています、危険など出来る限り避けつつも。それはイオン様を連れ出しました私達の責任でもありますからね・・・ですが自らイオン様が危険に飛び込むと言うのであれば、話は別です。先程カクノシンさんもおっしゃいましたが、コーラル城には神託の盾がどれだけの戦力を集結させているのかはっきりしません。そんな場所では私もお二人を確実に守れる自信はありません。故に私は後はヴァン謡将にお任せしたいのですが、それでも尚コーラル城に行きたいと言うのであれば私はイオン様を止めはしません。むしろ行くと言うのなら、イオン様への協力の申し出を今この時点で撤回させていただきます」
「えぇっ！？」
「ちょっ、ちょっと大佐ぁ！冗談でしょ！？」
そしてジェイドから出てきたのはイオンに対しての協力の撤回。それを聞きイオンは大いに驚き、アニスは必死にジェイドに言葉を否定してほしいと詰める。
「本気です、私は」
だがジェイドは詰め寄るアニスを、真面目なトーンで一言で一蹴する。



・・・今までのジェイドだったなら比古清十郎がいなかったら日和見を決め込み、適当に結論を濁していただろう。

だが比古清十郎の話はジェイドの考え方を大いに変えた、その日和見の姿勢を一気に変える程には。

比古清十郎に意見を同調させて強気でいるのは、その気持ちの現れと言えるだろう。



「仲介を頼み込んでいる立場であるとは言え、マルクトとダアトの立場はあくまでも同等の物です。そして皇帝の名代である私は平時はイオン様を護衛する立場であると言っても、いざというときにはその権限を行使することが出来ます。故に私はあえて危険を犯し整備隊長を助けに行くなら、皇帝の名代としてマルクトへの協力を導師が放棄したと見なしたものとして、その時点で協力を撤回するものとします」
「・・・っ！」
・・・あくまでも国と国の付き合いがある以上マルクトとダアトは対等の立場であり、無礼に対しての対処は厳正でなくてはならない。
ジェイドの今までにないほどのまともな導師としての対応を求められる声に、イオンはすぐには答えを返せずジェイドから視線を避ける。
「じゃ、じゃあ大佐・・・どうやってキムラスカに橋渡しをするつもりなんですかぁ・・・？」
するとなんとかイオンじゃなければ仲介は出来ないと言って体勢を立て直す気なのか、アニスが多大に顔色を伺うような視線を送りながら仲介の件を質問してくる。
「まぁこれはルーク殿の考え次第なのですが、ルーク殿に協力していただければ問題はないと思われます・・・ちなみにルーク殿はコーラル城に向かおうかと思われていますか？」
「えっ！あっ、あぁ・・・別に俺はコーラル城に行く気はねーよ。ヴァン師匠達が行ったし、お前達が言ったように俺が行くと危なそうだしな・・・」
「そんなぁ・・・」
アニスの質問にジェイドはルークに協力してもらうと言いつつ、コーラル城に行くかどうかを問う。いきなり自身に振られた話題に戸惑いながらもルークは訳を言いつつコーラル城には行かないと言い、アニスに落胆の声を上げさせる。









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