時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「・・・お前達はさっきヴァン謡将が兵を引き連れコーラル城に向かった情報を知らんのか?俺達はヴァン謡将達にこの問題を解決することを託した、なのに何故お前達はそれを気にせず導師に助けに言ってくれと言うんだ?」
「そ、それは・・・確実に隊長を助けていただきたいと思って・・・」
「なら何故預言の事など口に出す?そう言えば導師は動くだろうと打算してのことか?」
「「・・・っ」」
明らかに言葉に刺を持たせながら責め立てる比古清十郎に、整備士二人は言葉を詰まらせる。



・・・比古清十郎とて鬼ではない。人が困っていて本当に純粋に助けを求めてきたなら、出来る範囲で手を貸しはする。だが打算、それも預言の一言で自身を動かそうとしてくるような輩は何より嫌いだった。それさえ言えば何を差し置いても誰かが助けてくれる、そんな甘ったれている上に実質は傲慢な思考が見え隠れするが故に。



「それに隊長とやらを助けに行き、二人の内どちらかでもその身に何かがあったならお前達はどう責任を取るつもりだ?今の現状では俺達に兵を割く余裕はカイツールの人間達にはなく、護衛は期待出来ん。それに比べコーラル城に待ち構えているアッシュはどれだけの戦力を潜ませているのか分からん。そんな所に二人を行かせもしものことがあってみろ、その時点でお前達の首は落ち最悪キムラスカとダアト間での戦争を引き起こしかねんぞ」
「「っ!!」」
そしてその預言を盾に出す傲慢さを戒めんと最悪の場合のシチュエーションを口にし、一気に整備士二人は息を詰まらせる。その顔は一瞬にして青くなっている。



・・・だがこれは全然有り得る事だ、いくら比古清十郎が気を張っていても罠があったり人海戦術で来られたりしたら防ぎようがない。その結果命が失われるような事になれば、まず隊長を救う事を依頼したこの二人の命を持ってあがなう事は間違いないだろう。



「カクノシンさん、そこまで言わなくてもいいのでは・・・」
するとそこに比古清十郎の味方ではなく、整備士二人の味方をしそうに体を二人側に寄せたイオンが弁護の声を比古清十郎に向ける。
「考えられる可能性を俺は上げただけだ。言っておくが同様にこの二人の言葉から二人がコーラル城に行って何か起きれば、否応なしにこの二人は先程言ったような結末は十分有り得るぞ」
「っ!」
だがそう来ることも十分有り得ると理解した上で真っ向から切って返す比古清十郎に、イオンは二人と同じように言葉を無くす。
「そして先に言っておくが預言と聞いて今意見を変えてコーラル城に行くと言うのなら、俺はコーラル城には行かん」
「「えっ!?」」
更にそれでも頑固に意見を変えない様子を見せる前に比古清十郎は自身とジェイドは行かないと言い出し、イオンとアニスが驚きを隠せず声を上げる。
「どうしても行きたいと言うのであれば俺は止めはせんし、導師を止めるだけの権力もない。だが罠のあるところにみすみす飛び込む理由も一切ない。そんな状況にわざわざ飛び込む役目など、先に行ったヴァン達がやればいいことだ。それを敢えて無視するなどそれこそ普通に考えて付き合う道理がない」
「・・・確かにそうですね。私もその意見に賛成です」
「大佐ぁ!?」
そこからコーラル城に行かないと言った理由を話す比古清十郎の弁に、ジェイドも静かに同調の意を示しアニスは正気かと言わんばかりに大佐と呼ぶ。







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