時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「どう考えてもルークにはアッシュへ因縁を吹っ掛けるような出来事は起こさなかっただろう、ルークは生まれてからずっとファブレの屋敷にいたのだからな・・・考えられる可能性としては一方的にアッシュがルークへ因縁を感じているだけだとは思うが、そうしてしまう理由は恐らくだがヴァンだろうな・・・」
「・・・でしょうね。でなければ一連のルークへの執念はおかしいと言えます。ただそれでルークを襲うならば普通はキムラスカに戻る為の邪魔者を排除する行動ではないかと思えるのですが、その流れでカイツールを襲う事とは繋がりませんね・・・」
比古清十郎の推測はヴァンに原因があると指摘しジェイドは同意しながらも、それで軍港を襲うことには繋がらないと言う。
「アッシュは間違いなく自身に降りかかるであろう結末を知っているでしょう。ヴァン謡将が付いている現状で知らないと言う事はまずありえませんし、そうでなければルークに固執する理由がありません」
「だが固執するにしてもアッシュの気持ちがどちらに傾いているのかが分からんのが、正直不快だ・・・キムラスカに戻りたいなら自国の民を殺す所業は愚かしい以外の何者でもない。だが戻る気がないと言うのなら、何故ルークに固執する・・・放っておけば自身の命運を代わりに受け止めてくれるような人物だろう、ルークは・・・」
「・・・自身で言っておられますが、不快だと言うのがハッキリ顔に現れていますよ」
続いた言葉に比古清十郎はアッシュの矛盾点を口にしていくが、端から見ていたジェイドは切れ長の瞳が更に鋭くなり口元が歯ぎしりしそうな程食いしばったその顔にホントに不愉快なのだと思いつつそれを指摘する。
「・・・俺は預言もだが、筋を通した態度を取らん半端者も嫌いだ。それに加え勘違い以外何物でもない行動を自信たっぷりに取るような奴は尚更だ、国境で白昼堂々人目をはばからず殺人未遂を犯す奴など俺でなくともまず神経を疑う」
「確かに・・・」
その苛立ちの訳を詳しく説明され、ジェイドは納得する。



・・・アッシュの行動には確かな目的か見えない、それはジェイドの目から見ても明らかである。何か思惑があるにしても普通なら目的の方向性が見えるような感覚があるのだが、アッシュの行動は言ってしまえば思惑すらあるのかどうかを疑ってしまうような考えの無さを感じてしまう。それが確固とした目的を持って人から理解されずとも生きている比古清十郎からするば不愉快に思えるのだろう、ジェイドはそう感じていた。



「・・・まぁアッシュの考えについては後で話す気でいるなら、その時聞けばいいでしょう。今は別に彼と関わるべき時ではありませんし、それ以前に貴方が彼と会話をする気でいるのかは私は分かりませんからね・・・とりあえずはルーク達と合流して国境に戻りましょう、もう休憩は十分取りましたしね」
「・・・そうだな、そうするか」
だがアッシュの事での不毛な詮索をこれ以上話した所で何かが変わる訳ではない。さりげに不穏さを匂わせつつもジェイドは国境に戻る事を口にして流れをリセットしようとし、比古清十郎もそれに乗っかり二人はルーク達と合流しようと足を動かす・・・






・・・そしてルーク達と合流した二人。そしてさっさと国境に向かおうとしたが、入口付近で突然現れた整備士達に場に押し留められた。

整備士達に話を聞けばアリエッタに捕まった整備隊長を導師とルーク直々に助けに行ってほしいと嘆願に来たらしい。

・・・そこまではよかった。だが預言に今年の厄は取り除かれると言った整備隊長の預言の事を盾に出された時、比古清十郎は沈黙を破り口を挟んだ。





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