時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「キムラスカの人間・・・?」
「そうだ。言ってみればキムラスカは被害を受けた側であり、ダアトに訴訟を起こしてもなんら問題のない立場にある。そんなキムラスカに対し、ダアトが取った対応は直属の上司一人だけという手抜きに等しいような態度・・・これのどこにダアトの誠意がある?その上このヴァンが一人で行って、あのアリエッタやアッシュを逃がしたとなれば誰がダアトを信じられる?これだけ聞いて尚、お前達はヴァン一人で行かせる事が正しい判断だと言えるか?」
「「「「っ!」」」」
イオンのおうむ返しに比古清十郎はダアトの不誠実さと対応の不適切さを話し、今度はヴァンも含め一気にダアト陣の人間の声が詰まる。



・・・ヴァンが強く一人で行くことを推したのもあるが、それでもダアトのその意見を採用した対応は比古清十郎の言う通り不適切であることに違いない。

それに表向き自分と関係ないというように演技をしてはいるが、裏ではそれこそ密接な繋がりのあるヴァンをコーラル城に一人で行かせればアッシュにアリエッタを逃がす事は十分考えられる。



「そんな状態を避ける為にも俺はせめてキムラスカの兵士を連れていき六神将とはダアトは違い、戦争を望んでないと示すべきだと言っているんだ。まぁそれに加えて折角使える兵士がいるのに、それを見過ごすのも変な話だと言えるがな」
「え・・・私?」
そして比古清十郎はそうするべきだと言いつつもティアへと向き、使える兵士と言う。
「そうだろう。導師をわざわざてぐすね引いて待つ敵のいる地にやることはないし、同様に導師を守るべく常に隣に付く導師守護役もコーラル城に行くべきではない。ならばこの場において決まった役割を持たない兵士を送るのは、妥当と言えるだろう」
「それは、確かにそうですが・・・」
ティアの視線があからさまに何故と語る様子に比古清十郎はイオンもアニスも行くべきではないからと言うが、ティアはヴァンをチラッと見ながら複雑そうな顔をする。
「まぁこれは導師がどう判断するかにもよるだろうが、これを断ればお前はただの口だけの女に成り下がる。平和を願ってるなどと言っておきながら、実際に行動しなければな」
「っ!」
そんなティアの様子に比古清十郎は自尊心を盛大に燻る言葉をぶつけ、その顔を一気にひきつらせる。
・・・ティアのその自尊心と反感を持つ人間への反抗心はすさまじく高いが、それを逆手に取れば至って方向調整がしやすい。比古清十郎の言葉は容易にティアをコーラル城に向かわせる事に成功させていた。









・・・その後一同は話し合いの結果比古清十郎の意見を取り入れ、ヴァンとティアの二人が生き残りの兵を連れてからコーラル城に行く事が決定した。そして残った面々は事態の収集がつくまで国境まで戻って待機する事となった。



「・・・貴方はどう思いますか?コーラル城に来いと行ったアッシュの言葉・・・あれはヴァン謡将の指示だと思いますか?」
話をしたあと国境に戻る前に少し休憩をしてから行くことになり、比古清十郎は自分の近くに来たジェイドに真剣に話しかけられる。
「・・・いや、それはないだろう。ヴァンからしてこの港を襲撃して得られる利点はハッキリ言えばない。別段イオンはともかくとしても、ルークを必要としていないからな・・・ヴァンは今はな。恐らくはアッシュの独断だろう・・・」
「アッシュ、ですか・・・」
その問い掛けに律儀に答えつつも、比古清十郎の声が一気に不機嫌な物に変わった事でジェイドは眼鏡を押さえる。









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