時代と焔の守り手は龍の剣 第六話

「・・・」
「・・・つえー・・・」
ルーク達の周りは辺り一面、魔物の死骸達で溢れかえっている。その状況を生み出したのは比古清十郎であり、刀の血を振り落としてから納刀するその姿を見てルークは呆然としながらもどこか憧れを抱いた声を上げる。ティアにガイにアニスにイオンはただ驚愕して、突っ立っている。
「・・・さぁ、先に行きましょう皆さん・・・少々張り切り過ぎではありませんか?これでは私が出る幕がありませんよ」
「俺は後ろの神託の盾の小娘共や使用人には期待すらしていない。お前はともかく、奴らは気に食わん。そんな奴らに手出しをされることすら俺は不愉快だ。それが自分のおかげで敵を倒せたんだ、などと宣うような奴らなら尚更にな」
「・・・そうですか・・・」
そんな一同にジェイドは先に行く事を促しながらも先を行く比古清十郎の元に近寄り、話しかける。だが明らかに不機嫌だという様子で不愉快だと言われ、ジェイドはそれ以上は何も言わずに会話を止める。



・・・セカンと別れてからそう時間も経っていない状況でカイツールの軍港に向かっていた時、比古清十郎の苛立ちのメーターはかつてない早さで上がっていた。

まずはアニスが比古清十郎に話しかけてきたのだが、アニスが発する言葉は仕種全てが甘い媚びに満ちた言動ばかりだった。それも明らかに比古清十郎作の陶器をやたら褒めたたえつつも、それが欲しいと言わんばかりにねだる物・・・

それだけでも比古清十郎の苛立ちは凄まじく上がったが、イオンはそんなアニスの事を仕方ないですねといった様子で傍観していた。部下の行儀の悪さを罰するのではなく、逆に見守るように。

だがそれでも合流していきなりすぐにキレる訳にはいかないと比古清十郎は普段は見せない周りへの配慮をしながらルークの方を見ると、そこにはやたらにルークに馴れ馴れしく話す使用人のガイの姿があった。

内心何故公私の使い分けすらせずにそのように出来る、と思っていた所に魔物の大群が襲い掛かってきた訳だがそこで戦闘に入った時、ティアから詠唱中は守って!・・・という言葉をかけられた時、比古清十郎は盛大にキレた・・・ブチィッ!っと・・・

それが襲ってきた魔物全てを比古清十郎が殺意を全面に込めた形相で容赦なく切り捨てた、原因である・・・



(・・・これでまだ本気ではないというのだから、恐ろしいですね・・・)
後ろが一気に静かになりアニスも媚びを忘れる中、ジェイドは畏怖を覚えずにはいられなかった。
・・・セカンがラルゴを倒した時に見せた動きを見た時、ジェイドはその剣の腕を驚異だと感じていた。しかしセカンより腕は上だと言われ、不機嫌そのままに魔物の大群を手加減しているとわかる程度とは言えいともあっさりと実力の強大さを理解させるよう片付けてのけた・・・ジェイドはその事実に身震いを覚えていた。









・・・そんな比古清十郎に対しての認識が一気に恐ろしい物へと固まった中で、一同は港に着いた。



「・・・なんだ、この有様は」
港に入り中の様子を見た比古清十郎は煙が沸き立ち、キムラスカの兵士がバラバラと倒れている場の状況に眉間にシワを寄せる。
・・・と、まっすぐ先を見据えたそこに比古清十郎はある姿を見つける。
「あれは・・・神託の盾、だと?」
港の先にて対峙するアリエッタとヴァン、二人の姿を確認して比古清十郎は何事かと走り寄る。








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