時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「・・・という訳だ。俺の為に時間を取らせて済まなかった、出発しよう」
「じゃあセカン。貴女とはここでお別れですね、色々お世話になりました」
「・・・いえ、そんなことは・・・では私行きますので、失礼します」
だがセカンの驚きはさておき似合わない気遣いの言葉で比古清十郎が出発を口にし、ジェイドはセカンに別れの挨拶をして頭を下げる。その様子にセカンは戸惑いつつも同じよう頭を下げ、それからルーク達に向けてまた頭を下げると小屋の方へと内心歯切れが悪く歩いていく・・・
(師匠って、可愛いもの好きだったっけ・・・?違うよね・・・)
比古清十郎が可愛いもの好きだったかどうかを聞けないまま・・・



「あの、カクノシンさんでいいんですか?」
「・・・なんだ?」
そんなセカンを見送った後ティアは疑いの目を比古清十郎に向けながら声をかける。
「セカンは腕を見たから分かりますけど、貴方は戦えるんですか?」
「・・・心配はいらん。セカンに剣を教えたのは俺だ。そしてセカンよりも俺の方が腕は上だ・・・それでなんだ?戦えなかったらお前は俺の事を迷惑だとでも言って、俺を批難していたのか?」
「いえ、そんなことは・・・」
暗に役立たずを連れていきたくはない。そういうような含みが多大に盛られた言葉に、比古清十郎は真っ向からそれを鋭い視線を伴わせながら切って返しティアに視線を逸らさせる。
「・・・予想以上に険がありますね・・・」
「何か言いましたかぁ、大佐?」
「いえ、何も」
そんな様子を見てジェイドは自身も含んだ者達に対して悪印象を抱いていないとの比古清十郎の言葉が本当だと独り言を呟き、アニスが何事か聞くがジェイドは何事もなかったかのように返す。
「まぁいいじゃん。それよっかさっさと港に行こうぜ。もうすぐなんだろ?」
「そうですね、では行きましょうか皆さん」
「・・・はい」
そんな空気を自覚なく払拭するようルークが港に行く事を口にし、イオンもそうしようと言い出す。ティアは凹まされた状態のままながらも頷く。



(これからどうなるんでしょうね、この世界もですがこの人間関係は・・・)
そしてゆっくりと港に向かい出した一行の中で、ジェイドは比古清十郎がセカンの代わりにパーティーinしたことが大きな変革のうねりをもたらすと感じていた。世界とこのパーティーの人間関係、この二つに良くも悪くも・・・
(ただ、私は私に出来ることはやるだけです。もう自身の愚かさは彼により身に染みて理解した、後はティア達がそれを知ってどうするかですが・・・そこから先は私が関与することではありません)
しかしレプリカ技術が今もあると知った今、ジェイドからして必要なのは比古清十郎への協力。その協力の結果ティア達がどうなるか、それは当人ではないジェイドがどうにかすることではない。
新たな決意を胸に秘めつつ、ジェイドは比古清十郎の背を見ながら港の方へと歩を進めて行った・・・









一人の心は救われ、一人の心はたたきのめされはい上がった



龍の意志を二人は知った



物事は静かに動き出す、真なる改変を目指し・・・



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