時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

・・・だがふと、セカンはある不安を覚える。
「師匠・・・あまり事を荒立てないで下さいね?ジェイドさんがいる前でこういうのも何ですけど、師匠が対面してあまり心穏やかにいられるような人はいないと思いますから・・・」
「あぁ、それはお前の送ってきた手紙で大体どういった奴らの集まりかは理解している。それはお前の気にするような事ではない、お前の気にする事ではな・・・」
「・・・っ・・・!」
自身の経験から自身が嫌いな物は大体共通して嫌い。師の好みをよく知るセカンはいくらティア達でも穏便にいってほしいという願いも込めて口を出すが、ハッキリと答えを返されずに尚且つこれ以上聞くことを憚らせられるような話し方に言葉を続けるのを止める。言えば言う程逆効果になると思い。
「・・・先程からの私への指摘から思っていたのですが、どれだけ私達はニーツ氏もですがセカンの印象が悪かったんでしょうね・・・」
「聞くまでもないだろう、底辺だ」
そこにジェイドが力無い声で疑問の声を上げるが、比古清十郎は躊躇なく底辺だと言い放つ。セカンは慌ててブンブン首を横に振っているが、二人の間にセカンの姿はない。
「・・・これは手厳しいですね」
「自身の地位と立場を把握せず勘違いして行動している者に、何故俺が遠慮せねばならん。それに今まで取った愚かとしか言いようがない態度は事実以外の何物でもないだろうが」
「・・・確かに」
そんな言葉を飾らない比古清十郎に更に追撃され、ジェイドは得意の口八丁を出せずに頷かずにしかいられない。
「・・・言いたいことも言い終わった。とりあえず奴らの元に戻るぞ。流石にそろそろ待たせすぎていると言われ、いらん怒りを買いかねんからな」
「・・・そうですね・・・そうしましょうか、ジェイドさん」
「えぇ」
自身が話したいと思っていた話も一区切りついたところで比古清十郎はルーク達の元に戻ると言い出し、セカンもジェイドも断る理由もないので同意で返しその比古清十郎の後を付いていく・・・









・・・そしてルーク達の元に戻って来たセカン達。
「あっ、話は終わりましたか?」
「はい、イオン様」
「大佐、どのような話をしていたんですか?」
「えぇまぁ、少しニーツ氏がキムラスカに用事があるということで同行させてほしいと言って来られたんですよ」
イオンはセカン達を笑顔で迎えるが、ティアはどこか刺のある口調でジェイドに話の内容を問うてくる。そんなティアにジェイドはすかさず比古清十郎の同行の件を告げる。
「えっ、じゃあセカンも一緒に来んのか?」
「いえ、私は師匠から頼まれた仕事が別にありますのでここでお別れです」
「そうなんだ・・・」
そこでルークはセカンもかと聞くがすかさず否定されたことで、残念そうに納得する。
「ミュウゥゥゥ・・・じゃあ僕はどうすればいいですの?セカンさん・・・」
「あっ、ミュウ・・・」
だがその事実を聞き更に残念というか戸惑う声を上げる足元のミュウをセカンは見てから、比古清十郎に視線をやる。
「ミュウ、とか言ったな?」
「はっ、はいですの!」
そんな視線に比古清十郎はミュウを普段通りの険があるような視線で見つめ、ミュウは小さい体で緊張してしゃちほこばる。
「セカンからの手紙でお前がライガの件で恩返しに来たことは知っている。だが俺自身は別にお前に返してもらうような恩などはない。本来ならさっさと森に帰れと言うところだが、その意志が固い事も聞いている。だから特別に試験期間を設けてやる」
「試験期間・・・ですの?」
そんなミュウに置いておく気はないと言いつつも、試験期間を設けると言われミュウは首を傾げる。
「そうだ。しばらく俺とともに行動してまともに奉公が出来ると俺が認めたなら、お前を小屋に置いてやる。それが飲めんならこの場でお別れになるが・・・どうする?」
「やるですの!」
「ならいいだろう・・・しばらくは俺について来い、いいな?」
「はいですの!」
試験期間の内容を詳しく述べられやらなければ小屋に置かないと言われてミュウは即座にやると元気よく返し、比古清十郎の最終確認を受けると再び元気よく返す。
だがその光景を見て人知れずセカンは内心で驚いていた・・・







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