時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

・・・そして数分後、セカンはようやく泣き止み比古清十郎の胸からくしゃくしゃのその顔を離す。
「すみません、師匠・・・」
「落ち着いたか?」
「はい・・・」
少しは気が晴れたようで、セカンの声は先程よりも重さを感じられない。その確認を取ると、比古清十郎は頷いたセカンからジェイドに視線を向ける。
「という訳だ。状況も落ち着いた、今こそ話そう。俺の知る全てを・・・」
「はい・・・」
セカンの事が終わった為、今度こそは本題。否応なしに緊迫した雰囲気で話を切り出す比古清十郎に、ジェイドも真剣に頷く・・・









「          」












「・・・という訳だ」
「・・・それは、なんと・・・私の想像を遥かに超えているとしか、言いようがありませんね・・・」
・・・そして全ての話を聞き終わり、ジェイドは絶句に近い様子で眼鏡を押さえる。
「証拠が欲しいというなら後でマルクトに実物を送り届けても構わん、役に立たねば無用の長物だからな。このような時にこそ活用すべき物だ、あれは」
「・・・貴方の話には信憑性はありますが、証拠が無ければマルクトもなんとも言えないと思います。ですからそうしていただけたら助かります」
そんなジェイドに比古清十郎は証拠の提示をすると言い、ジェイドは半ば自身は信じているというような物言いをしながら眼鏡から手をどける。
「・・・お前自身は俺の話を疑わんのか?」
「疑うにしてもそれを覆すには貴方の話とヴァン謡将率いる神託の盾の動きを推測していくと、推測を否定するための材料があまりにも少ないんですよ。だから少なくとも、私はこの話は真実だと信じる事にしました。後の判断は上層部がすることですので」
「そうか」
そのジェイドの真意を図る比古清十郎の質問に、ジェイドは至ってまともに自身の考えを述べる。比古清十郎はその答えに頷きを一つ入れる。
「ですけど師匠、あれは持って来てるんですか?持って来てないなら一回小屋に戻らないと・・・」
そこで落ち着いたセカンが会話に入り、証拠の物は取りに行かないとないと言い出す。
「それはお前が行け、セカン」
「・・・え?」
その疑問に比古清十郎はセカンが小屋に戻れと簡潔に返し、セカンは何故という目で見る。
「手紙を送るにしても証拠まで一緒には鳩では送れん。それに一回戻ってまたこちらに戻るというのも二度手間な上、マルクトが手紙を読んでどういう対応をするのかまだ確定した訳ではない。だからお前は証拠を持ってカイツールの国境のマルクト側に行け、そこで証拠の受け取りと同時にマルクトがどういう結論を出すのかを見てもらいたいと思っている」
「・・・妥当でしょうね、それが。一刻を争う事態になるのは明白ですから、証拠を持つお二人の内どちらかがカイツールに向かった方が色々手間も省けますから」
「だったらジェイドさんの手紙をチェックするって言っていたのはどうするんですか?これからジェイドさんは港にルークさん達と向かうんですし、私は逆方向に行くことになるんですよ?」
比古清十郎の説明にジェイドも賛同するが、セカンはそれでは矛盾が生じるだろうと疑問をぶつける。



「心配はいらん、しばらくは俺がこいつに付いていってやる」



「・・・えぇっ!?」
だがあっさりと予想外の答えを出された事で、セカンは驚きを隠せず声を上げる。
「・・・なんだ、その態度は」
「えっ、えっと・・・まさか師匠がそんなことを言い出すとは思わなかったから・・・」
「もう俺も動かなきゃならん時期に来たと思ってきたとこなんでな。どちらにせよここらで行動する時だと思ったからお前にカイツールに行かせて、俺がこいつと一緒に行くことにしたんだ」
「だったらなんで私がカイツールに・・・?」
「多少は落ち着いたとは言え、お前にはまだ時間が必要だ・・・しばらくはカイツールでゆっくりしておけ」
「っ・・・はい」
そんな驚きに対し比古清十郎は訳を説明しつつもセカンへの気遣いを見せ、セカンはそんな気遣いにまた泣きそうになる気持ちを抑えながら師の意思に従うと返す。










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