時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「・・・ダメですね、私・・・師匠と一緒に頑張りたいって言ったのに、気を遣われてしまって・・・」
「・・・気にするな。流石に今までの話を仮定の状態でも俺が話さなかった事が原因だ。非を言うなら俺にある」
その涙の意は比古清十郎の手伝いを出来ない自身のふがいなさを歎く物。あくまで師匠の為に行動したいと思うセカンの涙声に、比古清十郎は珍しく非が自身にあると言う。
「・・・なら、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
するとセカンは神妙に声を低くし、問い掛けを比古清十郎にする。
「師匠は・・・私がレプリカだと知って、どう思ったんですか?」
「・・・何?」
・・・その問い掛けには多大な不安が込められている、そう感じた比古清十郎は眉をしかめる。
「だって話を聞いたら、私は普通の産まれ方をしていないんですよ。それを知って、私を気持ち悪いとか思わなかったんですか・・・?」
「・・・別に気持ち悪いなどと思った事などない。産まれがどうあれ一緒に暮らしてみたらただのガキだったからな、今更そんなことを気にした事もない・・・それともお前は俺の口から気味が悪い、などとでも言ってほしかったのか?」
「・・・っ!そんなこと、ありませんっ!」
切実でありそう言って欲しくないと弱々しい願望が込められた問い掛けに、比古清十郎はそんなこと思ったことはないと言うと同時に意地悪い問い掛けをする。その声にセカンは勢いよく頭を上げる・・・が、そこにあったのは・・・
「!?えっ・・・?」
・・・比古清十郎の胸元であった。そしてセカンは比古清十郎の腕で頭を抱かれ、胸元に引き寄せられると戸惑った声を上げる。
「・・・最初俺はお前を拾った時、厄介なガキを拾ったと思っていた」
「・・・っ」
そしてセカンの耳に届いたのはぶっきらぼうで嫌な事実を話している中身なのに、優しさを感じられる昔語り。その声にセカンは何も言わず黙り込む。
「色々お前の世話をしながらもお前の背後で渦巻いていた事実を知っていった頃、お前は最初会った時から変わらず俺から離れようとしなかった。男一人でまともにガキ一人育てた事もなく、普通の環境で育たなかったにも関わらずだ・・・生まれはどうあれお前は俺の元で生まれ育ち、何の問題もなく生きてきた。俺を慕うようにな・・・そんな子供を親がそんな程度の事で、無意味に嫌うはずもないだろう」
「!!」
・・・比古清十郎の口から出て来たのはセカンの事を子供と呼ぶ、優しい声。今までに弟子としての扱いの呼び方しかされず、ニーツという名字も義理の親子であると一応位置づける為と名字がないと面倒だという理由で付けられたのだと考えていたセカンはビクッと震え・・・
「・・・ヒッ、ヒグ・・・!」
・・・声を比古清十郎の胸の中で押し付け抑えるよう、涙を盛大に溢れ出させ始めた。



・・・エンゲーブでルークと出会った時から始まった今までにない不安を抱えつつ、そして増やしつつ旅をしてきたセカン。その上過去のトラウマを思い返し、つい先程には自身の出生の秘密を知ってしまった・・・本来ならショックで自身を見失ってしまう程の事実を羅列されたのだ。比古清十郎の言葉はさぞ、嬉しかった事であることが想像出来る。何しろ初めて自身を子と敬愛する師匠であり、今まで親と呼べなかった人物がそう呼んでくれたのだから・・・



「うわあぁぁぁん!!」
・・・喜びはとめどなく溢れ、抑え切れるはずもない。セカンは普段の落ち着いた姿からは全く掛け離れた子供のような泣き声で泣きじゃくり、しばしの間比古清十郎もジェイドも何も言うことなく立ち尽くしていた・・・








10/14ページ
スキ