時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「どうやら性根は心底は腐りきってはいなかったようだな、自分の罪が全てが終わった後に来ることを覚悟しながらも事態の収拾に動こうとするとはな」
「・・・貴方がレプリカ技術が現在も存在していると言ってくださらなければ、私もここまでは言ってはいなかったんでしょうけどね。ですがそれを知ってしまった今、私が見て見ぬフリをする訳にもいきませんから・・・」
「・・・だから自分の愚かさと向き合う事にしたのか?その果てにある自分の結末が暗い物しかないと、わかっていて」
「はい。でなければ、貴方は私を信頼しないでしょうから・・・」
知らない者にはわかりにくいが、少し満足そうに比古清十郎は神妙に俯きながら話すジェイドを見る。
「・・・まぁいいだろう。お前がもし恥も何も知らん愚昧の輩だったら俺は何も話さんつもりだったが、覚悟の程を聞いて話すに値すると判断した。先の手紙の件を守るなら話そう」
「・・・ありがとうございます」
そして比古清十郎は仕方ないなという風に先を話すと言い、ジェイドは頭を下げる。



・・・しかしここでジェイドが頭を下げなかったら、実際は自分達は相当な手詰まりに追い込まれていただろうと比古清十郎は内心で感じていた。
自分の活動、それは出来る限り人に明かしたくはないし容易に明かせる物ではないと比古清十郎は重々承知していた。だが状況がそれを許してはくれないことをセカンを拾ったことから、比古清十郎は色々探っていく内に理解していった。そしてそれを成す為には、何か大きな後ろ盾が必要だということを。

・・・そんな折、比古清十郎の元にセカンからの手紙が届き、中身を見て苛立ちを覚えた反面これは好機だと比古清十郎は考えた。マルクトを味方につけ、動く為の好機だと。

とは言えマルクトを味方につけるにせよ、繋がりを作るきっかけという物が必要。そのきっかけはセカンと一緒にいたジェイドという、判断力や人間性を疑わずにはいられない人物しか比古清十郎には思いつかなかった。軍などというものとの繋がりはおろか、ほとんど人との接触をしないが故に。

だから比古清十郎はジェイドを試しがてら、マルクトとの繋がりを作ろうとジェイドを責め立てたのだ。本当に自分の思うように動いてくれるか、そしてレプリカ技術のことを言って悔い改めて真剣に協力してくれるかを見る為に。

・・・結果としてはジェイドは自身の後ろめたさもあり協力を確約はしてくれたのだが、別のアプローチだったならジェイドが協力を拒否することも十分有り得た。だがそうなっていたとしても、比古清十郎はそれだけの話だったと考え気を取り直し行動していた事だろう。

それだけ比古清十郎の自身に課している使命は重い。あくまでもマルクトの協力はその使命を確実にするための手立てであり、そうならなくともその使命を命に代えてでも果たすという気持ちがあるほどに・・・



「・・・そういえば話に割って入った私が言うのもなんですが、セカンを放っておいて話をしていいんですか?今この事実を聞いたばかりでしょう、彼女は」
「む・・・」
そして具体的に協力してもらうために今から話をしようとしたが、頭を上げたジェイドからセカンの事を出され比古清十郎はセカンの方を向く。そこには表情に影を落とし、目をつぶったセカンの姿があった。






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