時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「・・・二つ、聞いてよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
するとジェイドから力無い問い掛けが比古清十郎の耳に届いて来る。
「もし私がそうしたとして、貴方の提供する物をマルクトがもらったなら今の状況の打開は容易になると言えますか?」
「それはマルクトが俺の言うことをどれだけ信じるかによる・・・が、知ってるのと知らんのでは雲泥の差になるのは確実だ」
「・・・では二つ目です。貴方は何者なのですか?先程から聞いていれば、到底ただの陶芸家とも思えません。兵法に精通しているのはわかりますが、陶芸にはそのようなものは必要ありません。それにセカンの剣術は到底独学で得られる物とは思えません。そう考えれば貴方が教えたのだとは思いますが、あのような剣術は私は見た覚えがありません。貴方は、一体・・・」
「その質問はお前がまず自らの過ちを認めてからだ。信用出来ん者に全てを話す程、俺は甘ったれてはいない。だがジェイド・カーティス、お前が俺の話を聞く価値もないと判断したなら今すぐ奴らの元に戻っても構わん。ただその場合は後々に取り返しのつかん状態になるだろうし、自らの過去から目を背けたとしてお前はただの馬鹿に成り下がるだけだがな。少なくとも俺はお前を認めはせん」
「っ!」
そして質問に受け答えする比古清十郎は辛辣を多大に含めたジェイドへの口撃で、極めて比古清十郎の申し出を断るには難しい状態に持って行く。



・・・言ってみればどっちもジェイドにとっては答えにくい質問なのだ、これは。過ちを清算することを選べば自分の身が危うくなるが、かと言って我が身可愛さに目を背ければ自身をおとしめることになる。だがどちらかを選択せねば道は開けない、故に逡巡をしたのだジェイドは。



「・・・・・・でしたら私の処遇を問う手紙さえ送れば、貴方はそれを教えていただけるのですか?」
そんなジェイドは少し考えた後、比古清十郎に慎重に再確認を取る。
「その手紙を出す時、俺かセカンが中身を確認することがまずの条件になるがな。話すだけ話してトンズラ、なんてこともお前の性格なら十分に考えられる」
「・・・それだけ私には信用がない、ということですか」
「今の話を聞いてそう思わないというのなら、相当な厚顔だな」
その再確認に対し更なる条件を口にされ、ジェイドは表情を隠すように眼鏡を押さえる。
「・・・また一つ、聞いてよろしいでしょうか?」
「・・・なんだ?早く言ってみろ」
だがそんなジェイドから出て来たのは答えではなく、再度の問い掛け。比古清十郎は若干苛立ちを見せつつ、先を促す。
「せめてその私の処分に関しては、一連の流れが済んでからでそうなるように上申する形でいいでしょうか?」
「何・・・ならお前は全てを話す気でいる、という事でいるのか?」
「・・・はい、そうです」
だがジェイドから出て来たのは自供する気でいるという、宣言。その言葉に比古清十郎は意外そうに目を見開く。
「レプリカ技術に関する問題・・・この問題に関しては私が取り掛かりたいのです。言ってみればこれは間接的とは言え私が蒔いた種ですし、それで取り返しがつかないような事態になるのは私の望む所ではありません・・・」
「だから罪を受ける事になっても、あえて自身で事態の収拾をしたいと言っているのか?」
「はい・・・そうです」
ジェイドの意志がこもった目が眼鏡を押さえる手を退けた事で、明らかとなった。それを確認しつつ比古清十郎は覚悟の程を確認し、ジェイドは迷いなく頷く。その顔を見て比古清十郎は口元に微笑を浮かべる。








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