時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「・・・はなから勝算がなかった、どうやらお前は今そのことに気付いたようだな」
「・・・はい・・・」
・・・ブリッジを取れば勝ち、子供の遊びの延長のような感覚でブリッジを取れば敵は撤退してくれる・・・とでも、勘違いしていたのか。
言葉が出ないジェイドに比古清十郎は認めたくないだろう当時の過ちを強制的に思い出させる。そしてまた話を連ねていく。
「そんなふうにお前はブリッジを奪う事に固執し結局囚われ、セカンに助けられ今に至る訳だがそもそもの役目はキムラスカに向かい和平の締結をすることだろう。タルタロスを襲った神託の盾に寡兵だけしかいない状況で決死に立ち向かう事では断じてない、そうだろう。ましてや本来護衛するはずだったルークとやらを戦場の矢面に出し、死なせてしまうかもしれない状況に立たせた。これは言ってしまえば任務ですらない、ただの勢いで行動して周りを巻き込んだ結果だ」
「っ・・・!」
勢い、言ってしまえばジェイドの行動にはそれしか感じられなかった。そう言われジェイドはまた反論出来ずに言葉が出せない。
「それを踏まえてマルクト本国に報告すれば、お前の判断は浅はかだとか考えがないだとか言われるだろう。その上でお前は百歩譲ってタルタロスが襲われた事実は相手の神託の盾に責任を押し付けられても、その後の対応に関してはお前の失策以外の何物でもない。自ら危険に突っ込み、一歩間違えて死んでいたならもう和平にすら行けずに終わっていた。そうなったらマルクトの意志をキムラスカに伝える事も出来ず、下手をすれば両国間で戦争すら起きていただろう。ルークとやらが死んでいたら尚更だ・・・それらを踏まえれば最低でもそれだけで和平の使者を降ろされるくらいの責任は背負わされるだろうな。それで俺はその事実全てをマルクトに明かした上で罰を自身に望む文を送らなければ、俺はお前を信用しない」
「・・・それが貴方の先程言っていた先を話す条件、とやらですか・・・?」
「そうだ」
比古清十郎としては非常に多弁な物言いで終わりを告げた弁に、ジェイドは力無く自身に望まれた罰に眼を閉じる。



・・・これら全ての経過をマルクトに報告したら、まず比古清十郎の言ったように和平の使者の地位を剥奪するどころでは済まされない。むしろ死刑で当然と言える物ばかりだ。

あの神託の盾に襲われた時、最優先の事項はさっさとタルタロスからイオンとルーク達を逃がす事であった。兵士とは守るべき存在を守り、身を粉にして戦う者。極端な話その守るという過程の上で兵士は死んでしまっても、護衛対象を守る事の方が重要なのだ。そしてタルタロスもあくまで移動手段であり、軍の物である以上優先されるべきはあくまで護衛対象だ。ルーク達よりタルタロスを優先することは言ってしまえば、判断ミス以外の何物でもなかった。

・・・そして更にその指揮のミスに加え、レプリカ技術の復活を許してしまった経緯がある。どう安く見積もっても死刑クラスの罪状にはなると思われる、峻烈だが当然な処置が待ち構えているだろう。手紙をマルクトに出したなら、ジェイドには確実に。

だがそれを自ら出せない奴に、これ以上の事を話す気もないし認める気もない・・・比古清十郎はこれを試金石として見ていた、ジェイド・カーティスという人物がどれだけ変われる人物なのかということと自分達がマルクトに協力するかどうかを試す機会として・・・









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