時代と焔の守り手は龍の剣 第五話

「・・・随分と理解が早いな」
そんなセカンに比古清十郎は内心を確かめるような声をかける。
「・・・多分、カイツールでヴァン謡将に会っていなければ私もまだ理解出来ず混乱したままだと思います。ですが謡将に会ってその声を聞いた瞬間、理解しました・・・あの人が、私を捨てた人なんだって・・・」
「・・・成程」
その問い掛けにセカンは体を抱き視線を反らしながら答え、比古清十郎はただ一言で納得する。
(無理もないか、セカンの心には捨てられた時の記憶がトラウマとして植え付けられている。ましてや予想だにしていなかった出会い、動揺しない方が無理がある)
だが内心はセカンに対する気遣いにより、それから先を言わないようにして多弁になっていた。
「・・・すみません、よろしいですか?」
「・・・何だ?」
そこで途切れた会話に入って来たジェイドの声に、比古清十郎は考えを途切れさせセカンに向ける目とは違う鋭い目付きで答える。
「貴方が私を呼び出した理由は、私に未だレプリカ技術が存在している事を伝える為ですか?」
「それだけではない、それは今までの流れからしてわかるだろう・・・だが今のお前に俺はそれを教える気はない」
「・・・何故でしょうか?」
呼ばれた訳を問うジェイドに比古清十郎は話途中だと言いつつも、話すつもりはないと傲然と告げる。その声に若干ジェイドは声を低くする。
「お前の行動にはマルクトを信頼するに足るだけの誠意とやらが見えん。特にキムラスカの貴族であるあのルークに対し、明らかに打算以外見えん態度でしか接していない様子を聞く限り俺はそれ以上は話す気は起きん」
「・・・誠意、ですか。でしたら頭を下げればよろしいのですか?」
また傲然と告げる比古清十郎に、ジェイドは得意の表面上の礼儀正しさで皮肉げな笑みで頭を下げようとする。
「・・・聞いた通りだな、言葉だけは丁寧だが中身がない。そのような形だけの物しか身につけなかったから、礼儀作法を身につける事と同様にレプリカ技術の封印も形だけしか出来もしなかったのか?」
「っ!?」
だがその表情もジェイド以上の盛大な皮肉が効いた比古清十郎の皮肉返しの一言に、一気に固まった。
「お前は何を勘違いしている。『ルーク』、いや今はアッシュとやらか・・・そいつからレプリカ技術によりルークとセカン、この二人が生み出された時点で既に貴様の罪は確定している。禁忌の技術をみすみすと共に研究していた者にとは言え、復活させてしまったことでな。それを踏まえて尚、偉そうに物事を言える立場にいるとでも言うのかお前は?」
「・・・いえ・・・」
一気に立場が決まった。そもそもの話で今レプリカ技術が存在していて、誰にも技術を悪用出来ないよう封印を施せなかったのは紛れも無くジェイドのせい。それを突かれてしまえばジェイドには反論のしようがないのも当然で、力無く肯定するしか出来ない。
「そしてこの問題はお前の責任であることもわかるだろう。お前の開発した技術がダアトのヴァンとやらの元でキムラスカの貴族に使われた・・・マルクトの上層部が知ればその一連の流れに対し対策を取ることもだが、当然お前に対する処分も考えるはずだ。その時もお前は先程のよう、ただ頭を下げるだけで許しを請えば許されるとでも思うか?」
「・・・いえ、思いません・・・」
その上でマルクトが取るだろう対処の事を口にする比古清十郎の声に、ジェイドは首を横に振る。









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