時代と焔の守り手は龍の剣 第四話

・・・そしてカイツールを出発して国境を無事に越えたルーク達。



軍港へと向かう道を歩く中、道が三つに別れた所でセカンは立ち止まる。
「すみません皆さん、こっちが私の師匠のいる小屋になります。なので皆さんとはここでお別れ、ということになります」
「あ・・・そういえばそうだったな。もうカイツールも越えたし、セカンは帰らなきゃいけなかったんだよな・・・」
すまなそうに別れを切り出すセカンに、ルークもそうだったことを思い出しながら名残惜しそうな顔を浮かべる。
(ちょっとルークさんを一人にはしたくないけど、もうこれ以上私は一緒についてはいけない・・・これ以上一緒にいたら、もう・・・)
しかし惜しいと思っているのはセカンも同じ、いやむしろセカンの方が心苦しいと言えた。今この場で別れる事でもうルークと今のようには会えないかもしれない、そう思えるだけに断腸の思いがセカンにはあった。
「では皆さんお元気「戻って来たか、セカン」・・・え・・・っ!?」
だが別れをしなければと頭をセカンが下げかけた時、その名を呼ぶ声が聞こえた為にデオ峠に向かう道の方を振り向く。その瞬間、セカンの顔は驚愕に染まった。



「師匠、何故ここに・・・!?」



・・・そこにいたのは自身の師であり、育ての親でもある比古清十郎だった。
(ヤバい・・・すごく、機嫌が悪い・・・!)
しかし比古清十郎がいただけなら、まだここはデオ峠に近いのでセカンもそこまで驚きはしなかっただろう。セカンが驚いたのは明らかに不機嫌極まりない、その表情にある。
付き合いの少ない者では普段の表情と比べても普通に機嫌が良くない表情だろうと言うだろうが、付き合いの長いセカンからしてみれば表情の険といった物が少なくとも三割は増しているように見えていた。下手に触れればいつ爆発してもおかしくないと、そう感じるくらいに。
「・・・あの、師匠・・・」
「・・・お前達がセカンと一緒にいたのか?」
この状況にいたたまれなくなったセカンは、恐る恐る声をかけどうにか場を納めようとするが、比古清十郎はセカンを気にした様子も見せずルーク達へと近付き質問する。
「・・・そうですが、何か?」
「マルクトの軍服・・・そうか、お前がジェイド・カーティスか」
その声に警戒心を強めたようジェイドが答え、その声に比古清十郎は不機嫌さを一層強め眉間を寄せる。
「セカンを迎えに来たついでに、少しお前と話をしにここまで来た。何、そこまで時間は取らせん。付き合ってもらうぞ」
「・・・なんなんですか、いきなり?随分と不躾な方ですねぇ、娘さんの礼儀正しさはどこから身につけた物なのでしょう」
そして有無を言わさない強制を多大に含んだ言葉にジェイドは呆れを含んだ皮肉たっぷりの言葉で返す。



「貴様と昔馴染みが起こした事に、大いに関する話だと言ってもか?」



「・・・っ!」
「「「「?」」」」
だがその余裕に満ちた表情は比古清十郎の一言により一瞬で消された。珍しく表情を緊迫した物にしたジェイドに、ルーク達はなんのことかわからず首を傾げる。
「・・・イオン様、少し時間をよろしいですか?」
「え、えぇまぁ」
そして先程までの意見を翻し話をしていいかと確認を取るジェイドの有無を言わさない声色に、イオンは戸惑いつつも了承する。
「ならば少し離れた所で話をするぞ・・・セカン、お前も来い」
「は、はい・・・」
話し合うことになった両者。だが自らも来るように言われたセカンは不機嫌な比古清十郎に不穏な気配を感じつつも、結局断る事が出来ず返事を返し比古清十郎達の後を追う・・・












在り方の違う師と呼ばれし二人の存在



両方を知りて後、麒麟児は自らの師より知る



死霊使いと呼ばれし者と共にもう片方の師の実態を



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