時代と焔の守り手は龍の剣 第四話

「ちょっと剣の稽古に付き合ってくれねーか?・・・あの時からまともに剣も振ってないし、なんかスッキリしねーから体を動かしたいんだ・・・」
「・・・はい、いいですよ」
気晴らしをしたい、少し間が空いたルークの声にセカンは心情を察し快く了承を返す。そしてルークが逆刃刀を手に取ると、セカンも刀を抜く・・・






・・・それから1時間近く剣を交えた二人は焚火の前で座り、話し込む。
「はぁ、はぁ・・・つえぇ・・・なんでそんなセカンつえぇんだよ・・・マジでかすりもしなかった・・・」
「師匠に鍛えられましたから」
とは言ってもルークは息を乱し顔を下に向けており、セカンは笑顔で涼しげな様子を見せているが。
「・・・なぁ、一つ気になったんだけど・・・セカンは師匠って呼んでるけど、なんで師匠って呼んでんだ?親なんだろ、セカンにとって」
「あ、それは・・・まぁ癖のようなものですね」
顔を上げ息を整えつつもルークが師匠と呼ぶのはなんでだと思い出したよう疑問を言うと、セカンは少し気恥ずかしそうに頬を指でかく。
「最初師匠は私を自分の所に置いておくつもりがなかったようなんですけど、その時に父親とか呼ぶのは私も違うっなって思って・・・それで師匠って呼べって言われたから師匠ってずっと呼んできたんですけど、今更お父さんとかとは呼べない程癖になっちゃって・・・多分師匠も言われたら言われたで、妙な顔をすると思いますしね」
「・・・どんな性格なんだ、その師匠って?」
「一言で言うと気難しい人、ですね。陰険でぶっきらぼうで人間嫌いなんですけど、なんだかんだで私の事を面倒見てくれてますからね・・・私は感謝しています」
「・・・っ・・・」
比古清十郎を思い返しながら話すセカンのフンワリとした笑みを見て、ルークは頬を赤らめ息をのむ。
「・・・あ、あー・・・なんつーか、ヴァン師匠とは全然タイプが違うんだな・・・ヴァン師匠はいつも俺に優しく接してくれるからさ、ちょっとセカンの師匠ってどうなのか気になって聞いたんだけど・・・」
「っ・・・ちなみに、謡将は普段どんな様子なんですか?」
だが夜の暗闇と火の明かりが幸いしてそのルークの様子はセカンにはハッキリとは見えなかったが、自身のことをごまかそうとヴァンのことを引き合いに出ししどろもどろに話し出す。ルークからすれば幸いだろうがセカンはその話題にはっと食いつき、真面目な顔でヴァンのことを問う。
「あぁ、まぁ優しいのは今言ったろ?それで剣もすっげーつえぇんだ。話も聞いてくれっしさ・・・」
焦りを隠しきれないルークはどんどん屋敷にいるときのヴァンのことを話していく・・・



(・・・なんか、不自然だな。謡将)
ルークの話す気を失せさせないよう所々質問を挟みつつヴァンのことを聞いていくセカンはその話からヴァンという人物の印象を更に胡散臭い物としていた。
(いっそ好印象以外何もルークさんに植え付けてない、全く人間臭い所を見せてない・・・ファブレって家の中だから変に弱みを見せる訳にはいかないとかっていう事情もあるんだろうけど、師匠と弟子という関係にしてはあまりにも希薄過ぎる・・・)
その胡散臭さを感じる理由はルーク主体の話とはいえ、ヴァンがあまりにも隙を見せない事にあった。
・・・言ってみればそんなに頻繁に会えない者同士とは言え、本当に信頼しあう師弟関係なら少しは欠点なり負の感情なりを見せる事もあるだろう。だがそれがルークの話では一切ない、いっそ清々しい程に。
(なんかルークさんは謡将を慕っているけど、謡将はそんなに入れ込んでいない気がする・・・)
師弟関係というには少し寒いと言える、一種の儀礼じみたヴァンの態度。ルークの前でそれを一切崩してないことに、セカンはルークとヴァンの温度差を感じていた。






・・・ヴァンに対して更に警戒心を強めたセカン。それからセカンはルークの話もそこそこに切り上げ、二人で宿に戻り休息を取った。









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