時代と焔の守り手は龍の剣 第四話

(この声、聞いた事がある・・・師匠に会う前の、あの薄暗い所で・・・!)
瞬間、フラッシュバックするセカンの記憶・・・それはセカンにとって、思い出すのが苦痛な物・・・セカンを平野に捨てた男の声。捨てられる事がトラウマとなった原因とも言える存在が目の前にいる・・・それを瞬時に理解してしまっただけに、体が正直に反応してしまっていた。



「・・・いえ、気にしないで下さい。少し気を張っていて疲れただけですので・・・」
「・・・そうか。アッシュからルークを守る事で緊張の糸でも解れたのかもな・・・済まない、礼を言わせてもらおう」
「・・・いえ」
だが体が拒否反応を示しているとは言え、その事実を正直に明かす訳にはいかないとセカンはらしい訳を口にする。ヴァンは少し含む所もありそうながらもなんとか納得し、軽く礼を告げる。
「・・・ヴァン!」
だがそんな二人の空気を一切無視し、ティアがヴァンに敵意を剥き出しにしてナイフを構えだす。
(・・・ある意味助かった、かな)
セカンはそんなヴァンが自分に向けていた視線を奪い取ったティアに、少しだけ感謝していた。変に長い間ヴァンと話したくないと思っていただけに。ただその行動がどういった暴走の上で成り立っているのかわからない為、純粋な点で感謝は出来なかったのであくまで少しである。









・・・その後ヴァンがティアをなだめつつ、色々情報を交換する為にカイツールの宿で話し合う事になった。その際、セカンはジェイド達とイオンの目的がキムラスカとの和平に向かう事だとハッキリと知った。



(和平がすんなり成功するとは到底思えない・・・神託の盾の妨害はこれからも当然入って来るだろうし、それを切り抜けたとしてもキムラスカがそれに簡単に応じるとも・・・)
推測から確信になってしまった事にセカンは不安要素がありすぎる為、どうするべきかと考える。
(けど和平以上に気になるのがこの人・・・)
そしてその上でセカンは個人的事情も含みつつ、目の前のヴァンという人物をどうしてもただのいい人などではないと見て注意深く観察する。トラウマはあるが、それを必死に抑えながら。
・・・聞けば神託の盾首席総長という身分ながらもキムラスカのファブレ公爵邸にルークの剣術の稽古をつけるためによく行っているらしく、その稽古の最中にティアが襲って来たとのことらしい。身分においては確かに信頼出来るのだろうが、既に怪しい人物と認定するに値する材料は二つある。それはセカンという当時十歳程の少女を平野に捨てた事と、ティアという実の妹に襲われなければならない程の何かを行っているだろうことだ。
(この人の事も師匠に報告した方がいいな・・・)
少なくともこの穏やかそうにしている顔の裏には何か犯罪者としての一面を隠し持っている、規模はどれだけかはわからずとも。セカンはこの後すぐに比古清十郎に手紙を届け、ヴァンのことも伝えようと決心する。



・・・そして話が進み、ルーク達の旅券を持って来たヴァンはルーク達にそれを手渡し、ヴァンは一足先に港の方に向かい話をするから、ルーク達はここでセカンの体調も考え休憩してから出発したほうがいいということで話は収まった。

そしてヴァンが宿から出立し、セカンが比古清十郎に手紙を送り夜になった・・・



「・・・ふぅ・・・」
「・・・あれ?ルークさん、どうしたんですか?」
暗闇に包まれた宿の一室でベッドからスッキリしない様子で起き上がるルークに反応し、セカンも体を起こす。
「あー、セカン・・・いや、ちょっと眠れねーんだ・・・ちょうどいいや、少し一緒に外に出てくんねーか?」
「・・・はい。いいですよ」
見た目だけでなく内面もスッキリ出来てなさそうに頭をかくルークに、セカンは笑んで返す。






・・・そして宿を出た二人はたき火を焚いて、その横で対峙する。








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