時代と焔の守り手は龍の剣 第四話

「・・・という訳なんです」
「私達がエンゲーブに来た時そんなことが・・・」
イオンの説明が終わり、ティアは複雑そうな顔になる。
「ライガの習性を考えたなら、確かにセカンのやったことは安全策と言えるでしょうね。ただそのライガがアリエッタの母親であるとはイオン様もセカンも予測出来ていなかったようですが」
「そうですね・・・僕はクイーンがチーグルの森にいたとは思ってませんでしたので・・・」
「そもそも私はライガがアリエッタの母親であることは知りませんでしたし・・・」
「まぁいいんじゃねぇの?結果として、何も起こんなかったんだし」
「確かにそうですね、実際エンゲーブにも私達にも被害はありませんでした。アリエッタの事は偶然だとしても、これはセカンの判断のおかげです」
「ありがとうですの、セカンさん!」
「もういいのよ、ミュウそこまで言わなくても・・・でもミュウ、いいの?ここまで来ちゃって・・・」
「ミュウ?」
ジェイドから始まった会話は一通りライガへの対策について概ね好評な意見をいただきつつも、セカンはミュウを下に置き心配そうに問い掛ける。
「私はしばらくはエンゲーブに行くことはないからチーグルの森にはミュウを送れないの。だからチーグルの森に帰るならミュウが自分で帰ってもらわないといけないんだけど・・・」
「心配ないですの!僕はまだ帰らないですの!」
「えっ?」
エンゲーブに行く予定はないためにミュウを送れない、そう困って切り出すセカンにミュウは元気よく帰らないと小さな手を挙げて返す。
「チーグルは恩を忘れないですの!長老から僕はセカンさんに季節が一巡りするまで恩返しをするように言われて来たんですの!だから僕はセカンさんにずっとついていくですの!」
「・・・えっと、それは・・・」
純粋故に言える迷いなき宣言。これがセカンが何も背負わぬ身だったら歓迎はしていただろうが、そうでないために困って言葉を詰まらせる。



(どうしよう。ミュウを連れて帰ったら師匠が色々言われそうだし、それにこれからのことにミュウを巻き込みたくないし・・・)
そんなセカンの心に浮かぶのは師匠である比古清十郎が連れ帰ったミュウを見て真っ先に浮かべるしかめっつら。まずペットを飼うようなタイプではないし、この甲高い声を常に聞いて比古清十郎が不機嫌にならない可能性など有り得ないとセカンは思っている。
だが比古清十郎が不機嫌になるだけならまだセカンは百歩譲って自分が責任を取ればいいと思っている。問題はこれからやることにこの純粋がそのまま姿になったミュウを巻き込みたくないと、セカンが思っている事だ。



「・・・ねぇミュウ、なら約束して。私には師匠がいるんだけど、その師匠がダメだって言ったならずっと私について来るって言ったのは考え直してくれない?食料に関してお金を出してくれたのは師匠だし、私は師匠にお世話になってるから小屋に戻ったらどっちにしても師匠の許可がないと貴方と一緒にいることは出来ないの。だから師匠と話してダメだったら、そうしてもらえないかな?」
巻き込みたくない、そう思うからこそセカンが搾り出した苦肉の策は比古清十郎を引き合いに出してダメだったなら諦めてもらうというもの。
「ミュウゥゥゥ~・・・その師匠さんも僕達を助けてくれた人ですの~・・・わかったですの~、師匠さんにお話をするですの~・・・」
その苦肉の策は成功で間接的とは言え比古清十郎もチーグルを救った人間と言われ、ミュウは眉を下げ悲しそうにセカンの言った言葉を受け止める決意をする。
(師匠のことだから、断るとは思うけど・・・大丈夫だよね)
そのミュウを見ながらも後をぶん投げしたことに、セカンは比古清十郎の怒りという一抹の不安を覚えつつその考えをあえて頭から消し去った。






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