禁忌とされた封印された過去との対峙

「それで今、サフィールさんは知事の手伝いをしているんですか?」
「えぇ、しばらくはここに戻り色々考えていたんですがようやく心の整理がついた時に何かしなければと思ったんです。色々気遣ってくれたネフリーやケテルブルクの人達の為にやれることをやろうと・・・それでネフリーに頼み込んで彼女の手伝いをしているんです」
「おかげで知事としての仕事ははかどっています、サフィールは頑張ってくれていますから」
「そうですか・・・」
次に現在のサフィールについての話題を振ると、そこまでに至った経緯と共にネフリーが役立っていると微笑を添えて述べた事にフリングスも少し安心したように微笑みカップに口をつける。
「・・・ホッとされましたか、私の様子を見て?」
「え?・・・あぁ、すみません。顔に出ていましたか?」
「えぇ、露骨にではありませんでしたが」
「参りましたね・・・」
サフィールがその様子に伺うよう言葉を向ければ、フリングスは気持ちが顔に出ていた事を自覚し苦笑する。
「・・・確かに安心はしました。ジェイドさんも今となってはファブレ邸で立派に執事をやられていますから、サフィールさんもどうしているのか現状を見ていませんでしたから少し心配で・・・」
「兄さんに会ったんですか?」
「えぇ、元気にしていましたよ。それとサフィールさんにアリエッタしかわからないかも知れませんが、カクノシンさんともお会いしました。あの方も元気そうでしたが、もう会えないでしょうね」
「カクノシン・・・あの人と・・・」
「知っているんですか、知事も?」
「えぇ、三年前にサフィール達の件で会いましたから・・・」
それで素直に自分の気持ちを述べジェイドや比古清十郎に会ったことも告げるフリングスに、ネフリーは比古清十郎の事に複雑そうに表情を歪める。
「・・・あの人には感謝しています。あの人は兄やサフィール、それにピオニー陛下の迷いを断ち切る為に動いてくれたのだから・・・」
「その点については私も、です。おそらくあの方が容赦のない言葉を送っていなかったなら、私は今なおネビリム先生の復活を諦めきれずにいたかもしれませんからね・・・物理的にももう不可能だと知らされ、精神的にも容赦なく伏せられなかったら・・・」
そしてしみじみと感謝の言葉を漏らすネフリーにサフィールも同調を示し、コクコクと頷く。
「え・・・アリエッタはあの人がそんなに優しいなんて思えなかった、ですが・・・」
「あの方は厳しくはありましたが、歯に衣を着せず平等に物事を言う人です・・・確かに優しいという言葉とは普段は縁遠いかもしれませんが、あれでいてあの方なりの優しさを見せる時もありますから」
「そう、なんですか・・・」
ただ一人比古清十郎の恐ろしい面だけしか知らないアリエッタがその姿を思い出したのか拙い口調に戻りつつ声を出すと、サフィールの一応フォローに釈然としていないような様子ながら一応納得する。
「・・・まぁとりあえずはもう完全に吹っ切った、と言うことでよろしいんですね?」
「えぇまぁ。色々迷惑に心配はかけましたが、吹っ切れました。ネビリム先生がこれでいいと言ってくれることはありませんが、あのままずっとこだわるよりは今の方がいいと先生も分かってくれると思います。ただ一方的な形になるのは少々心苦しくはありましたが、私は卒業すると決めたんです。ネビリム先生への想いに囚われる事から・・・!」
「そうですか・・・」
それで再度もう大丈夫かと確認を向けるフリングスに、サフィールはもう迷いはないとまっすぐな目を向けフリングスを納得させた。その答えがいかに真実に満ちた物か、その想いを受け取ったが為に。









30/32ページ
スキ