時代と焔の守り手は龍の剣 第四話

「・・・話の途中ですみません」
「ん?なんだい?」
その神経を疑ったからこそ、セカンはガイの話に横入りして口を出す。
「・・・何をやってるんですか、ティアさん?貴女、どうしてそんなこと堂々とやれたんですか?」
「・・・セカン?」
そして静かに溢れ出るのは呆れ。明らかに失望がこもった瞳をティアに向けるセカンに、ルークは少し動揺して探るような表情になる。
「・・・貴女には、関係ない事よ」
「関係ない?よく言えますね、そんなこと。何の目的でヴァン謡将を襲ったか知りませんが、現に貴女はこうやってルークさんにガイさん、それに屋敷の人を巻き込んでしまったじゃないですか。それなのに貴女は謝罪はおろか、導師にさえちゃんとマルクトに飛んだ経緯を詳しく話していない。そればかりかガイさんがその時の事を話していた時、話されたくなかったとしか考えてないように見えた態度を取っていた・・・見ていて貴女の態度はとても不愉快です、自分本位で自分の中でだけ話を終わらせるその態度が・・・!」
「!!」
関係ない、ティアにとって一番口にしやすい逃げの単語。だがそれが放たれるとセカンは目に見えて静かに声を怒らせていき、終いには滅多に見せない怒りを顔に浮かべティアをたじろがせる。
「現にティアさん、貴女はルークさんに対して申し訳ないと思わなければいけないというのに何故そんなに上からの目線でいれるんですか?巻き込んでしまったからには自分が下手に出て真摯にしなければならない立場にいるというのに・・・!」
「だ、だからこうやって屋敷に送ろうとしてるんじゃ・・・」
「それが下手に出る、ですか?送ろうとしてる、という言い方は自分がやってあげてるという言い方にしか聞こえませんよ、ティアさん。こう言った場合、願い出るのが下手に出る態度としては正しいと思いますよ。『私のせいでこんな状況に貴方を陥らせてしまった、謝罪として貴方を屋敷まで送らせてくださいお願いします』・・・と言ったようにね。私からすれば貴女の言い方は押し付けがましいとしか思えません、まして謝罪しているとはとても・・・」
「・・・っ!」
怒りながらでも冷静に謝罪と押し付けの違いを述べ軽蔑の眼差しを浮かべるセカンに、今度はティアがカァッと瞬時に顔に怒りを浮かべる。
「何を言ってるの!元々ルークがヴァンを守らなければ、こんなことにはならなかったじゃない!」
「「「「・・・っ・・・」」」」
・・・激情に任せた、無神経な一言が室内に響いた。場の空気はセカンがティアを責めていたピリピリとしたものから一気に冷ややかな物となりルークは不快感を浮かべ、ジェイドはどうでもよさそうに、イオンは悲しそうに、ガイは訳がわからないと言った視線でティアに視線を集める。
「・・・ティアさん、貴女自分が悪かったというよう言っていたのにその声をあっさり翻しましたね?」
「・・・えっ・・・っ!?」
そしてセカンもその一声で怒りも霧散し、代わりにまた呆れを含ませた声を向ける。すると周りの空気にようやく自分が浮いている事に気付いて、ティアは何故と驚きを浮かべる。
「そもそもルークさんもティアさんという敵が来たからヴァン謡将を守った訳ですよ?貴女がどのような訳で謡将を襲ったか、ルークさんは知らないで貴女を止めようとしました。結果二人望まぬ事が起こったとは言え過失は間違いなく貴女の側にあります、ルークさんに非はありません。あると言うならおっしゃってくれませんか?どのような非がルークさんにあるのかを詳しくね」
「・・・っ!!」
続いたセカンの声に自らの失言がどれ程浅はかだったのかを思い知ったのだろう、無意味な反論すら許されない弁にティアはセカンから顔を背けて挙動不審に目を泳がせる。
「・・・だから私は不愉快だと言ったんです。自身の事しか考えず、そうやって周りの人の事を考えもしないその態度が・・・」
「・・・」
そしてセカンは改めて突き付ける、ティアの態度がどれだけ考慮がなく思いやりがないのかを。自身の発言がどれだけ愚昧かを教えられたティアから反論が出るような様子はなく、ただ悔しそうにうつむき唇を噛み締めていた。








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