禁忌とされた封印された過去との対峙

「私は考えたのです・・・今の私が神託の盾として動けるのかと。その結果、ヴァンに協力する義理立てもなくかといって神託の盾やダアトに対し忠誠を誓える程の気持ちがないことを改めて理解しました。そしてそんな私があえて神託の盾にいても何にもならないだろう事を」
「だから神託の盾を辞める、と?」
「えぇ。ただこれは私の考えた事なのですが、アリエッタにそっくりそのまま当てはまるとは思えません。とは言え私の忠告としてはアリエッタから考えて今のダアトや神託の盾に純粋に義理立てが出来そうにも、忠誠を誓えそうにもないと言うのなら辞める方がいいと思いますよ。そしてそれから考えればいいんです、色々と自分の中にあるごちゃごちゃとした事を」
「・・・これから考える、ですか・・・?」
「えぇ、少なくとも今の貴女はそうするべきです」
それで自身の中には忠誠も義理も存在しないからと堂々と言い切るディストは更に前置きをしつつそれから考えるべきと言い、アリエッタの確認と疑問の問い掛けに頷く。
「もし今から神託の盾を辞めたとしてもまだ数年程度なら、貴女はまたダアトに戻ることも出来るでしょう。ダアトに後ろ髪を引かれるような想いがあれば、ですけどね。しかし今のままダアトにいたところでただズルズルと何となくでいるだけになる可能性が高い、今の貴女を見る限り・・・」
「・・・だからダアトから離れた方がいい、ですか?アリエッタは・・・」
「えぇ・・・向き合いたくない程の辛いことと向き合わざるを得ない貴女の気持ちは少なからず私にも分かります・・・ですが向き合ってしまったからには、受け入れるかどうか・・・それ以外に選択肢はないんですよ・・・」
「「・・・っ」」
その確認と疑問にディストなりに身を案じて時間が必要と言葉を向ければアリエッタもその意味に気付くが、続いた次第に声が小さくなり寂寞の想いが反比例して込められた言葉にフリングスもアリエッタと共に驚きに目を見開いた。ディストのその重大な何かがあったと感じざるを得ない様子に。
「・・・話はズレましたがどちらにせよ一度貴女は神託の盾を辞めて落ち着いてどうするべきかを考えた方がいいでしょう。貴女はまだ16で、数年程度ならまだダアトに戻っても取り返しのつく若さですから。無論戻らないという選択肢もありますが、それは私が強制出来る事ではありませんからね」
「・・・でもアリエッタ、まだどうするべきかわかんない、です・・・」
「そこはフリングス少将にお聞きしますが、アリエッタは後どれくらいでしたらこちらに置けますか?」
「そうですね・・・長くても1ヶ月程度ですが、それまででしたら可能かと思われます。元々アリエッタは降伏という扱いでしたし、私の権限を使えば酌量の余地としてそれくらいは出来るかと」
「そうですか・・・」
ディストはそんな視線に話題を変えて辞めた方がいいと言うが、アリエッタはまた迷いを浮かべる。そこでフリングスに考える時間を作れるかと聞けば1ヶ月は可能と返され、ディストは頷き真剣な面持ちでアリエッタを見つめる。
「アリエッタ・・・貴女が今辛い事実に対面していることは重々承知しています。導師の件やヴァンの件で。ですがこれだけは言わせてください・・・事実は事実、それは変えられないということ。それをどう受け止めるかで人は変わるという事、そして私は貴女がそれらの事実を乗り越えることを望んでいるという事を・・・」
「え・・・ディストがアリエッタに望んでいる、ですか・・・イオン様達の事、乗り越えるの・・・?」
「えぇ、少なからず貴女の気持ちはわかるつもりでいますからね・・・ですから貴女には是非乗り越えていただきたいんです、辛い過去を受け入れる事で」
「っ・・・わかった、です。アリエッタも色々考えてみる、です・・・」
そして自身の気持ちをありのままにぶつけディストは告げた、乗り越えて欲しいと。その声にアリエッタもなんでと戸惑っていたが、その気持ちが本気だとわかっただけに頑なだった心を開き頷いた。ディストの言うようやってみると・・・









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