禁忌とされた封印された過去との対峙

「・・・もう出ますよサフィール、これ以上ここにいてもネフリーの迷惑になるだけです」
「・・・そう、ですね。わかりました、行きましょう・・・」
そんな状況にジェイドは退出を切り出し、ディストも流石に空気を読んでか重く頷き部屋を後にする。
「では私も行きます、ネフリー」
「・・・兄さん、貴方変わったわね・・・前の兄さんだったらこんなこと言うはずはなかった・・・」
「・・・それは否定しませんよ。前の私ならこのような事態は避けようと賢しら顔をしながらその実、過去を見ないようにあらゆる面倒を忌避していたでしょうからね・・・」
「・・・兄さん・・・」
自身も後に続かんと背を向け別れを告げるジェイドにネフリーはなんとも言えない複雑な表情で話し掛けるが、振り返ることなく実感が多大にこもった肯定を返して去っていく。その後ろ姿を見送りながらネフリーはただ兄に対する複雑な想いを一言で呟くが、ふと首を横に振る。
「後でまた会いに行かなきゃ・・・そうでないと多分兄さんに会える事はこれからないと思うし、話をしないと・・・」
・・・ネフリーの心中にはもう一度腰を据えて話をしたいという沸き上がる思いがあった、妹しても同じネビリムの教え子だったことからしてもジェイドにまだ話を聞きたいと。



だからこそネフリーは時間を空けてからと考え複雑な想いを抱きつつ、逸る心を抑えながら椅子に身を預けた・・・












・・・それでしばらくしてサフィールも落ち着いただろうとネフリーは部屋から出て、二人がいるだろう宿の方へと向かう。



「・・・あれは・・・もしかしてあの人が兄さんの言っていた、カクノシン・・・?」
ネフリーはそんな二人の姿を遠目だが宿の前で見かけるが、その二人の前にいた比古清十郎の姿を見てそうではと予想をつける。
「・・・あっ、宿に入ったけどカクノシンという人はまだ・・・」
遠巻きに見ていると話をつけたのか二人だけは宿に入るが、比古清十郎だけそこに残ったことに眉を寄せるが・・・
「・・・えっ、あの人がこっちに・・・」
その比古清十郎が自身の方に来る姿に若干ネフリーは身構える。
「・・・なんだお前は。ついさっきから俺の方に視線を向けていたようだが」
「あ・・・失礼しました。私はこの街の代表をしていますネフリー=オズボーンという者で、先程貴方が一緒にいたジェイドの妹です」
「・・・ほう、お前がジェイドの妹か」
それで近付いてきた比古清十郎が視線に気付いたことを告げれば詫びるように頭を下げて自身の立場をネフリーは明かし、その答えに比古清十郎は納得したように声を上げる。
「成程、確かに似ているな・・・兄を追い掛けてきた、と言った所か?」
「はい、サフィールが落ち着いた頃だろうと間を空けてきたのですが・・・どうにも間が悪かったようで・・・」
「ほう・・・」
続けてこの場にいる訳を言い当てられネフリーはばつが悪そうに表情を歪めるが、そんな姿に比古清十郎から感心した声が上がる。
「なら付いてこい、どうせディストを落ち着かせるのにしばらく時間がかかる。その間は酒を飲む傍ら俺が奴らのことを話してやる、俺の奢りだ」
「・・・いいんですか?」
「言ったろう、どうせ今行っても時間がかかると。その間待ちぼうけを食らうよりは暇潰しになる。それに俺もあの辛気臭い中にあえて突っ込む気はないし、時間を潰したいんでな・・・気にするな」
「・・・わかりました、ご一緒しましょう」
それで比古清十郎が提案したのは時間潰しの飲みの誘い。ネフリーはそんな誘いに困惑の表情を浮かべたが、互いの利になるから気にするなと強く言われならと首を縦に振って了承した。







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