禁忌とされた封印された過去との対峙

「それでも、よ・・・私は兄さん達がどんな気持ちを抱いていたのか、それを理解出来ていなかったから兄さん達がこんなに苦しんでたのかと思うと・・・」
「ネ、ネフリー・・・」
しかしと尚も自身を責めるかのような声を悲し気に上げるネフリーに、ディストも下手な慰めも言えずただオロオロとする。
「・・・サフィール、もうここまでにしましょう」
「ジェイド・・・」
「私が言えた義理ではないのは百も承知ですしネフリーを利用するような言い方になるのは気が引けるのですが、最早ネビリム先生の記憶だけをよすがにしても意味のない所にまで来てしまったんです。あらゆる観点から見ても・・・」
「・・・っ」
そこに静かにジェイドが入り最後の説得と言わんばかりの真剣でいて寂寞の想いの込められた言葉に、ディストも複雑な表情で言葉に聞き入る。
「サフィール、もう卒業する時が来たんです。私達がネビリム先生にこだわり、囚われ続ける日々から」
「ジ、ジェイド・・・」
「・・・我々は長いことその事実から目を背けていました。貴方はネビリム先生を忘れようとしないのに対し、私は気付こうとすることから目を背け、ピオニーに関して私がはっきりと言うのもなんですがあの時からの我々との縁になんだかんだとこだわり続け・・・唯一我らの中で先生の事を過去の事として成長出来たのはネフリーくらいです。こうやって我々の事を哀れむくらいに」
「っ・・・あ、哀れまれていると言うのですか・・・私は・・・?」
「少なくともそれがピッタリだと私は思います」
そして比古清十郎の言葉を用い卒業するべきと口にし更にネフリーの事を用いるジェイドの声に、ディストは動揺を目に宿しプルプルと身も震わせる。
「哀れむという行動は自覚のあるなしは別にせよ、立場に考え方が違う者が出来る行動です。立場に考え方が似通った者なら同情とか同調になるでしょうからね・・・その点で言えばネフリーははっきりと我々と違いますが、それが我々よりはネビリム先生の事を過去のものとしていることの証拠でもあります」
「・・・そ、そんな・・・」
「最も私もネフリーからすれば似たようなものだったのでしょうが・・・サフィール、貴方はいいのですか?もしまだネビリム先生の事を諦められないというなら、最早貴方の心変わりを願うことは私には難しくなります。ですがそうするならこれだけは確実な事があります・・・それは決して貴方を突き放そうとしないネフリーの無償の優しさに甘え、哀れまれるだけの惨めな男になるという事です」
「!!」
更にネフリーの事を引き合いに出した上で尚ネビリムの事を追い求めた時の事をジェイドが告げれば、衝撃に目を見開きディストの動きが止まった・・・流石にそこまで言われてしまってはディストもどう反論どころか、言葉を放つことも難しかったのだろう。
「・・・サフィール、今すぐに結論を出せとは言いません。明日にはグランコクマに戻りまた牢に繋がれるでしょうから、その間にどうするか考えてください・・・ただ流石に貴方もここまで言われてただ何も考えなしに結論は出さないでしょうが、これは言っておきます・・・お願いします、サフィール。ネビリム先生の事をちゃんと受け止めて生きるようにしてください。これは私の紛れのない・・・本音です」
「っ・・・ジェイド・・・」
「兄さん・・・」
そしてこれが最後と自身の切なる願いまでもを含めて考えるようにとジェイドが言えば、ディストがまさかと目を見開き呆然としネフリーも意外だと言わんように声を漏らした。








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