禁忌とされた封印された過去との対峙

「だがもうこの状態では最早何も出来ん、とどめを刺してやる」
「待ってください・・・それは私が」
「・・・お前がか・・・いいだろう、やれ」
「っ・・・ジェイド・・・!?」
それで刀を振り上げ下ろさんばかりの比古清十郎を止めたジェイドが槍を取り出した事に、比古清十郎はその目を見て刀を下ろし場から少し離れディストは何をと正気に戻りその光景に目を最大限に見開く。
「た、助けて・・・ジェイド・・・どうして、私は音素があれば完璧な存在になったはずなのに・・・」
「・・・すみません、貴女をそうしてしまったのは私の責任です。だからせめて・・・私の手でカタをつけます」
「ジェイド・・・!」



‘ズブッ’



「・・・っ!」
‘フッ’
・・・自身に近付くジェイドに恨めしそうながらもすがるように力なく見上げてきたネビリム。その姿に悲し気に謝罪を述べつつジェイドは槍を構え、ネビリムの声を遮り・・・その顔に槍を突き刺した。



その瞬間ディストは呆然とした表情になるが、元がレプリカであるだけにネビリムは死体を残さず音素の光となって跡形もなく消え去った。まるで最初から何もなかったかのように。
「・・・すみません、最後を譲っていただいて」
「構わん、元々ここにはお前らの未練を断つために来たような物だ。特に不満などない・・・まぁ未だ衝撃を受けている奴はいるようだがな」
それを見届けた後頭を下げるジェイドに気にしてないと言いつつ、比古清十郎が視線を向けた先には呆然としたままのディストがいた。
「・・・行きますよ、ディスト。もう終わったんです、ここでやることは」
「っ・・・ジェイド・・・」
「・・・貴方も聞いて予感はしていたはずです、こう言った結果になるかもしれないことは。それに貴方も受け入れなければならないんですよ・・・あのレプリカは私だけでなく、貴方も平然と殺そうとしたことを」
「っ!」
ジェイドはその意図を理解し帰還を切り出すがディストは泣き出しそうな目を向けてきた為、あえて事実を思い出させるよう殺されそうになった事を口にするとビクッと青い顔で身を震わせる。
「・・・まずは戻りますよ、ディスト。色々と思うところはあるでしょうが、ケテルブルクに帰ってからにしてください」
「・・・・・・はい、わかりました」
その上で再度帰るように声をかければ大分力がなかったが頷き、暗い面持ちでディストは立ち上がり先を行く二人の後をついていく・・・















・・・それから三人は来た道を戻り、ケテルブルクへと戻った。その際道の険しさに再度ディストの体調を考え休憩を取ることになったが、その時以外に三人の間に会話が交わされる事はなかった。空気の重さに下手な会話を交わすような気持ちを三人は持てなかった為に・・・






・・・そして戻ってきたケテルブルクの入口。
「・・・俺は適当に過ごす、明日になれば戻ってくるからお前らも適当に過ごしておけ」
そこで早速と言わんばかりに二人の元から足早に離れる比古清十郎・・・元々事が終われば隘路を進む事にレプリカのネビリムと戦うことを踏まえ、戻ったなら一晩ケテルブルクで休息を取ることになっていた。故に比古清十郎が取る個人行動を二人も止めることは出来ないのだが・・・残された二人は重い空気にならざるを得なかった、特に何も言えないディストは。
「・・・とりあえず場所を変えますから私に付いてきてください、ディスト」
「・・・はい、わかりました」
「では街の中に行きますよ・・・」
流石にジェイドもこのままではいけないと思ったのか、宿とは言わず場所を変えようと切り出す。その声にディストは力なく頷き、ジェイドの後に付いていった・・・










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