禁忌とされた封印された過去との対峙

「なんなの、貴方のその剣は・・・動きの鋭さ以上に、あまりにも攻撃が重すぎる・・・」
「当然だ。剣術とは元来身のこなしもだが、腕力も必要になるもの。何にしても剣を振り物を斬る、その分の力がな。そして飛天御剣流に限って言えば奥義を取得したから終わりと言うような底の浅い剣術ではない、むしろ継承者となったそこからが真に『比古清十郎』としての力量を高め続けなければならないんだ。この外套を先代から譲り受けた時からな」
「・・・っ」
(・・・成程、そう言った効果もあるのですか。あの外套には)
そのネビリムは息も途切れ途切れに強すぎると言うが、『飛天御剣流の継承者、比古清十郎』という名に今までの生がいかに重いか・・・そう語る比古清十郎にネビリムはたまらず圧され、ジェイドは密かに納得していた。



・・・『比古清十郎』が代々譲り受けてきた継承者の証の外套、これはただの証ではなく通常生活からその心身を鍛え上げることを目標としての物だ。でなければ重さが十貫もあり筋肉を逆さに反らす為のバネが仕込んであるものなど、わざわざ着たいと思うものなどいるはずもない。

それに飛天御剣流の技、特に奥義は放てば放つ程威力が強いことがあり肉体への負担がどんどんと溜まっていく。そう言った肉体を技を放っても平気なよう鍛えていく為の物でもあるのだ、外套は。

そしてその外套は『比古清十郎』の名を受け継ぎ、初めて譲り受ける物となる・・・それを考えればいかに比古清十郎とて外套を受け取った時点では今のように動くことなど到底出来なかっただろう。ある意味では継承者になってからが本番と言えるし、その外套を着てからはそれこそ今まで以上に努力をしたことだろう、比古清十郎は。ただ本人はその努力について聞いたら大したことはないとなんてことはなさそうに言うのは簡単に予想がつくが。

・・・そう見れば納めるべき点を納めれば免許皆伝となる他の剣術とは特殊な一線を画した剣術であると、飛天御剣流に関しては確かに言えた。



「ただまぁ、ここまで俺の剣を受けてまだ生きていた奴もいない。その点については称賛してやろう」
「・・・フフ、お褒めにいただき光栄ね・・・でもその様子だともう勝ったつもりでいるのかしら?」
「もう勝負は見えている、これ以上論ずる必要もねぇよ。ただお前を殺す結果に変わりはないがな」
しかしとそんな自身の剣を受けて生きている存在に称賛を向ける比古清十郎にネビリムはここに至って不気味に余裕を見せた笑みを浮かべるが、全く意に介した様子を見せず返す。
「・・・甘いわ!その油断、突かせてもらう!」
「っ!(まずい、あの音素の高まりは奥義クラスの譜術を使う程の物!)」
その瞬間してやったりと言わんばかりにネビリムが凶笑を浮かべ、大量の音素の光を自身の周りに発生させた。それをネビリム最大の奇襲と見たと同時に奥義の譜術と感じたジェイドは瞬時に焦りを浮かべる。
「油断?何の事だ?これは余裕というものだ」
「ひっ・・・!?」
・・・だが目の前の比古清十郎は焦らないどころか、今までにない殺気を盛大に込めた視線を浮かべ納刀し・・・ネビリムを恐怖に凍り付かせ、硬直させた。
「とっておきだ、特別にくれてやる」





「飛天御剣流奥義、天翔龍閃!」






‘ズバァッ!’
「・・・っ・・・!」
・・・その硬直の刹那の宣言と共に放たれたのは、飛天御剣流においての奥義であり最速の抜刀術である天翔龍閃であった。



飛天御剣流の奥義に恥じない威力を存分に発揮し、その剣はネビリムの体を胸から上とそこから下を分断するよう・・・切り離した。勝負が決まったその一撃のあまりのすさまじさにジェイドもただ呆然とその光景を見つめていた。
「・・・う・・・あ、あ・・・」
「・・・しぶといものだな、まだ生きているか」
だが勝負が決まったと思っていたが、地面に落ちたネビリムの上体から苦悶の声が聞こえてきた。比古清十郎はその声に技を放ち刀を振り切った体勢から振り返り、眉をしかめる。










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