禁忌とされた封印された過去との対峙

「フフ、いいのかしら?ジェイドを下がらせて」
「問題ない、俺一人で十分に事足りる・・・お前を殺すくらいな」
「フフ、怖いわ」
対するネビリムは余裕を持ってジェイドを外したことを心配するが、全く気後れしないどころか更に余裕に皮肉が混ざった笑みを持って刀を構えながら返す姿に軽口で返す。
‘キィンッ!’
「・・・っ!」
・・・刹那の瞬間、ネビリムが魔剣ネビリムを持って斬りかかり比古清十郎はそれをなんなく受け止めた。いきなり戦いが始まったその光景にジェイドは驚きに息を呑み、目を見開く。
「言うだけの事はあるようね、今の一撃を受けるなんて」
「フン、なんてことはない」
「そう、ならこれはどう?・・・獅子戦吼!」
‘ゴオォォォッ!’
ただ一人の聴衆となるジェイドはさておきと剣を交わしあいながら会話をする二人だが、ネビリムが余裕と共に放った体当たりからの獅子の顔をした闘気を放つ技・・・獅子戦吼を食らい比古清十郎は吹っ飛んだ・・・
「・・・フン、成程」
・・・が、地面に接地する前に宙返りをして体勢を整え着地した比古清十郎は然程ダメージを食らった様子も見せず真剣な面持ちで納得の声を上げる。
「中々に威力の伴われた一撃、それにその身のこなし・・・マルクトの師団を壊滅させた実力は伊達ではない、というところだな」
「フフ、なら今からでもジェイドを参加させる?私は構わないけれど」
「自惚れるな、俺が誉めたのはあくまでも動きの鋭さに攻撃力だけだ。お前に俺が倒せるなどとは一言も言っていない」
「あら、そう。なら私を殺してみたらどう?出来るのでしょう、貴方なら」
そして滅多にない賛辞を送るその姿にネビリムは笑みを深め共闘を勧めるが、検討違いと言われた上に必要ないと比古清十郎から告げられ挑発めいた口調を向ける。
「そうか、ならやってやろう」
‘ダンッ!’
「っ!?」
・・・その挑発が比古清十郎からの攻撃の合図の引き金となった。
何の気なしに言葉を紡いだ比古清十郎は一足跳びで距離を瞬時に詰め、そのあまりの早さに余裕の崩れなかったネビリムの顔が初めて驚きに染まった。
「飛天御剣流、龍翔、槌閃!」
‘ズバ、ズバァッ!’
「がっ・・・!」
比古清十郎はそのまま止まることなくディストの作ったカイザーディストに放ったのとは逆に龍翔閃から龍槌閃に繋げ、胸部から切り上げた後に龍槌閃で頭を切りつけネビリムに苦悶の声を上げさせ頭を下げさせる。
「龍巻閃・凩!旋!嵐!」
‘ザンッ、ザンッ、ズガァンッ!’
だが比古清十郎の連撃はそこで止まらず、龍巻閃の派生技の三連携攻撃を持って遠心力と共に右に左と切りつけ、最後に上から前方宙返りのようにしながら体重の乗った一撃をネビリムに食らわせその身を地面へと叩き伏せた。
(・・・これが・・・飛天御剣流、比古清十郎の力・・・なんということだ、まるであのレプリカが相手になっていない・・・しかもこれでまだ外套も取ってないと言うのですから・・・)
まさに一方的、戦いが始まってほんの少ししか経っていない。なのに勝負の結末がもう見えたようにしか見えないこの展開・・・ジェイドは今目の前にある光景をただただ愕然と見ていた、ネビリムが手も足も出ず地面に這いつくばってそれを比古清十郎が見下ろすその様子を。
「成程、耐久力に関しても並外れた頑丈さだな。ここまで俺の剣を受けてまだ五体満足とは・・・普通の奴にとってみれば確かに始末に負えん存在だな」
「っ・・・それは、貴方には言われたく、ないわ・・・」
比古清十郎はそんな中でネビリムを見下ろしながらそのタフさに感心の声を上げるが、それだけの攻撃を受けても尚ネビリムは立ち上がり抗議の声を向けてくるだけの余力を見せる。しかしその体は確かに五体満足で切れて離れてこそいないが、攻撃を受けた部分には確かな刀の傷跡が深くついており常人ではまともに動けるはずもない姿となっていた。おそらくネビリムが相手でなければ既に事切れていただろう。











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