禁忌とされた封印された過去との対峙

「・・・一つ、よろしいでしょうか?」
「・・・なんだ?」
と、そこに休憩していたはずのディストが自身らに寄ってきてたまらず声をかけてきたことに比古清十郎はそちらに目を向ける。
「貴方はその報を聞いて、後悔をして悲しみはしなかったのですか?自分がどうにかすればそれを回避出来たかだとか、師の為に何か出来なかったかなどと・・・」
「っ・・・!」
そして出てきた問い掛けにジェイドが息をつまらせかける・・・その問いが先代の終わりかたとネビリムの事をオーバーラップして出されてる、そうだと気付いた為に。
「師の為に?フン、何を言う。師の事を考えたからこそ、俺は何もしなかった・・・それだけのことだ」
「・・・え?」
だが比古清十郎の答えに声を出したディストだけでなくジェイドもキョトンとした、何もしないことが師の為と言ったことに。
「お前が何か勘違いをする前に言うが、そもそも先代は俺と暮らし安穏とした生活を送ることも出来た。しかしそれを先代はよしとしなかった事に加え、俺もそれを受け入れた・・・俺達がそうした理由は何故か分かるか?」
「・・・いえ、私にはわざわざ離れる理由が見当たりませんが・・・」



「なら答えてやる。師と弟子に限らず言うが、何かを教え教わるという立場という者は何かを授け受け取る必要がなくなった時かもしくは必要ないと自身で判断した時・・・それが師弟関係の終わりと俺達が共通して見ていたからだ」



「なっ・・・!?」
・・・更に続けた比古清十郎の師と弟子における関係の終わりの考え方にディストは絶句した、ディストが考えたこともないドライ過ぎる考え方に。
「これは例えの話になるが、学校というものは何年までここにいて勉強だとかという時間が決まっていて所属する場所だ。そこで基準までの学が足りない者や何か事情がある者には留年などの措置が取られる事もあるが、基本は定められた時を過ごせば学校は卒業となるだろう・・・それと同じだ。本当にその過程で学べと言われたものを学べたかなど知るよしもないが、本来教わり授ける立場にある者と言うのはそれらが終われば終わるのが当然の成り立ちだ。その関係はな」
「そ、そんな・・・私はそんなこと望んで・・・」
「まぁ師弟関係が終わっても続く関係があることもあるだろう、そいつらに縁があればな。だがそこに師弟関係はあると思うか?いや、師弟関係を続けられると思うか?」
「え・・・?」
「まだ何かを教え授ける立場にいるというなら師弟関係は続いていると言えるだろう。だが教えることが無くなるか予定していた期間が終われば、そこに師弟関係はない。あったとしてもそれは師弟関係だったという事実、過去だけだ。無論何かを学ぶ為にあえて師匠にまだと関係を求める弟子もいないことはないが、俺が奥義を継承した時には先代も俺もそのようなことは選択はしなかった。あえて一緒にいるだけの馴れ合いなどする気はなかったんでな」
「!!」
そこで例え話を用い師弟関係の在り方について話す比古清十郎。ディストはそんなのは嫌だと力なく首を振るが、一切の遠慮をせずに馴れ合いを自身と先代が共に拒否をしたと比古清十郎が告げた事に衝撃を受け泣きそうな目でたたらを踏んだ。
「親しい者が死んだ、その事に悲しむのは一向に構わんだろう。だが先代に対しての俺の気持ちを言うなら弔いの気持ちはあっても、大げさに悲しむ気は一切なかった。その時には先代の事は割り切っていたのでな、どこかで命を無くして終わるだろう事はな・・・だがお前はそのように割り切れずにいる、ただネビリムとやらを復活させることに躍起になってな」
「・・・諦めきれる訳がないでしょう、その為にここまで来たのですから・・・」
「フン、元々その為にここに来たのだからとやかく色々言う気は俺にもない。だがこれだけは言っておいてやろう・・・そうやってただ師にすがりつくことが師の本懐などと考えているようなら、お前は師の事など何も考えてないガキ・・・それ以外の何者でもない、ということはな」
「・・・っ!」
・・・師に対する考え方の違いがあまりにも浮き彫りになっていた。比古清十郎は師に加え自身の事まで知るからこそ割り切り自立した振る舞いをして、ディストはネビリムにただすがる以外に出来ずに何も考えられていない。



だからこその比古清十郎のシンプルな自身への侮辱と取れる言葉にディストは何も言えずに口をつぐみ頭を下げた、その事が事実だけを指し示してる上に比古清十郎の言葉に下手に反論してもただ受け入れるにしても、そこから発展してネビリムの復活が間違いだと認識することの怖さに・・・







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