禁忌とされた封印された過去との対峙

「そうか、なら行くぞ」
「えっ・・・まさか、今からですか?」
「むしろ今からでなければ無理なくらいだ。一月もしないうちにプラネットストームの停止を敢行する予定なのでな。それを過ぎればもう譜術を使うには不都合な事態になる」
「っ!・・・成程、時間はもう今しかないということですか・・・」
だが比古清十郎が今出発と言い出したことにディストはキョトンとするが、続いた理由に今だけなのだと気付き緊迫して頷いた。
「幸い残りの触媒の在処の手掛かりもあり残りは四つ、アルビオールを使えば触媒はすぐに見つかるだろう」
「少々お待ちを・・・四つとはどういうことですか?貴方がお持ちだった触媒は魔剣ネビリムだけではなかったのですか・・・?」
「何、簡単な事だ。惑星譜術の触媒は一つ、ピオニーが持っていたんだ」
「そうなのですか?」
続けて残り四つと比古清十郎が言うと二つ持っているのかとジェイドが前聞いていた事から問いかけると、ピオニーが持っていたと魔剣ネビリムとは別の剣を取り出したことにピオニーに視線を向ける。
「あぁ。色々あってその聖剣ロストセレスティをマクガヴァンから譲り受けたんだ。ただあくまでコレクションの一つとして譲り受けたんだが、そういった理由ならと思ってな。貸すことにした」
「そうだったのですか・・・」
「そういうわけだ・・・では行くぞ、早目に済ませてグランコクマで待機しておきたいんでな」
「はい」
「・・・待ってください、せめて私も連れていってください」
「何・・・?」
その目にピオニーが聖剣ロストセレスティを手にした経緯を口にすればジェイドは納得し、比古清十郎は言葉をかけつつディストに出発を切り出す。そんな比古清十郎にジェイドは足を止めるよう自分もと神妙な面持ちで切り出すが、すぐに比古清十郎は眉を寄せていた表情を元に戻す。
「ピオニー、こいつも連れていくがいいか?」
「連れていくのか?」
「話を聞いていて思ったが、ネビリムとやらはお前ら全員に関連する人物だろう。流石にお前は行けんだろうが、こいつは立場もあって付いていけるはずだ」
「っ、成程、いいだろう。ジェイド、お前も行ってこい」
「・・・ありがとうございます」
すかさずピオニーに連れていく事の許可と共に気を遣ってやると言う比古清十郎に、ピオニーは一瞬息を詰まらせつつも付いていけと命令を出しジェイドは礼を言い頭を下げる。
「ではセカン達にしばらく留守にする旨を伝えてから行く、出来る限り早くグランコクマに戻るから気にするな」
「あぁ・・・じゃあな」
やり取りも終えてから比古清十郎は出発すると切り出しピオニーの送り出しの声を受け、私室を三人で退出していく。
「・・・ネビリム先生のレプリカ、か・・・まさかこんなことになるとはな・・・」
そして一人残ったピオニーは先程は見せなかった寂しげな表情を浮かべる。
「改心していなかったら殺すとカクノシンは言ったが、改心している可能性は低いだろうな・・・話によれば当時のマルクトの師団がそのレプリカに潰されたとの事らしいが、そんな存在が簡単に改心するとも思えん・・・願わくは無事に事を終えて戻ってくることを願おう、何事もなくな・・・」
・・・ディストのよう執着するわけではないが、ネビリムの事は確かに好きだったピオニーも思うところがないわけではない。



苦い想いを自身の中で確かに感じながらピオニーはそっと願った、せめて少ししか可能性はなくとも平穏無事に終わることを・・・






9/32ページ
スキ