禁忌とされた封印された過去との対峙

・・・比古清十郎の推測は実に的を得た推測だった。これは比古清十郎は知るよしもないことだが元々ダアトを出てケテルブルクにネビリムが行ったのはヴァンが生まれた歳で、ネビリムが死んだのはその3年後・・・つまりこの時点でハッキリ言えるのはヴァンはネビリムと深い接点を持てるような間柄にはなり得ないと言うことだ。生まれた月日を考えると。

そして更に言うならジェイドの言葉とディストの言葉を併せるなら、ネビリムの身体情報となる遺体はレプリカのネビリムを作ったことにより消失したこととなりケテルブルクにあるだろう墓にはネビリムの遺体はないことになる。

そしてそもそもケテルブルクに遺体があったならディストが見逃すはずがないからこそ、ディストはヴァンの言葉に乗ったと言えるだろう。身体情報を渡す、そう持ち掛けられた取引に。

しかしそれで一縷の望みを持って協力することを選んだディストだが、レプリカ技術の提供さえしてもらえればそれでいいヴァンに騙されていた可能性を考えていなかったことは愚かと言えた。おそらく全てヴァンの思い通りにいきディストが身体情報を求めてきたなら、それこそ比古清十郎の言ったような真実を明かしての忍従か反逆かの二つの選択肢を強いられていただろう。その上で反逆を選んだならディストの命はまずないだろう、相手の強さを鑑みれば。

・・・そして更に言うならそれこそモースが身体情報を持っているなど有り得ないことだろう。預言達成以外に興味がないのに一々ダアトから離れたネビリムの情報を逐一頭に入れるはずなどない。ましてや身体情報に関してなどそれこそ思い付きもしないだろう・・・要はディストはただ踊らされただけなのだ、昔を懐かしみ惜しむあまりその想いを利用される形で・・・



「・・・う、嘘です!そんなこと信じませんよ、私は!」
・・・ただそれを信じれば今までの全てが水の泡、今のディストはそう思っていることだろう。
唐突にディストは嘘だとわめきたてるが、比古清十郎は一切揺らぐことなくピオニーに視線を向ける。
「おい、今牢にはヴァンがいるだろう。納得をしてもらうためにもこいつに事の真相でも説明してもらえ、当事者から聞けばいくらなんでも受け入れられるはずだ」
「・・・そうだな。よしジェイド、お前ディストを連れてヴァンの所に行ってこい。そして話が終わったらまた二人で戻ってこい、真相を携えてな」
「はい、わかりました・・・行きますよディスト」
「っ・・・えぇ・・・」
それで比古清十郎からヴァンから話を聞かせろとの案が出たことにピオニーも頷きジェイドにそうするよう指示を出せば、ディストはどこか怯えたようになりながらジェイドと共に部屋を退出していく・・・
「・・・あの姿から察するに真実であってほしくない、そう思っているかのような反応に見えたな」
「だろうな。そして奴も認めたくないと思いつつも半ば感じているのだろう、俺の推測が当たっているだろうことをな」
そして二人になった場で会話を交わすが、ディストの態度の意味を二人は正確に把握していた・・・もうディストは確信をしていると。
「・・・おい、この際だ。一つ貸してほしいものがある、それを俺に渡せ」
「・・・貸してほしいもの・・・?」
そんな中で比古清十郎はピオニーではなく部屋の一角を見ながら話をし、ピオニーは何をとそちらを見る・・・そこにはピオニーのコレクションの武器の姿があった。












・・・そして数十分後、ジェイドはディストを連れてピオニーの私室へと戻ってきた。戻ってきたが・・・明らかにディストは影を背負い込んだ状態だった。
「その様子では予想通りだったようだな」
「えぇ、そうです。大方貴方が予想した通りでした。ただ一応謡将達も牽制に加えて本当に事が終われば身体情報を渡すつもりで探しはしたそうですが、やはりネビリム先生の身体情報はなかったとも言っていました」
「・・・っ!」
「そうか」
すぐさまその姿に結果を問うとジェイドは探した上で無かったとヴァン達の行動も併せた上で告げ、ディストが体を震わせる中で納得の声を上げた。









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