禁忌とされた封印された過去との対峙

「・・・ほう、これは・・・」
「何かわかりましたか?」
・・・再び場所はシェリダンの宿の一室。
そこで渡された剣を様々な角度から見る比古清十郎が声を上げたことに、ジェイドはどうかと問う。
「ただの剣、ではないどころではないなこれは。おそらくこの剣は魔剣ネビリムだ」
「っ!・・・その剣を、知っているんですか・・・?」
「なんだ、お前も知っていたのか?」
「いえ、その名前に少し驚いただけです・・・」
すると魔剣ネビリムという単語が出たことにジェイドはたまらず驚き比古清十郎は知ってるのかと聞くが、気を取り直して首を横に振る。
「まぁいい。とは言え俺もこの剣についてはどこかの文献で見ただけだが、この禍々しい空気は間違いないだろう。ある意味では確かに妖刀とも言えるが、正確にはその名の通り魔剣と思っておいた方がいい」
「魔剣、ですか?」
「あぁ。その記録によれば惑星譜術だかの触媒に使われる武器の一つらしい。そしてそれは全部で六つあるらしいが、今となってはその六つの在処はわからんとの事だ」
「随分と詳しいのですね・・・それらの知識は別に貴方には必要ないと思うのですが・・・」
「何、昔色々な場所に行って様々な事を調べていた時に目についた本を片っ端から読んでいただけ・・・その中で一際目についたのが惑星譜術に関する本というだけの事だ」
その姿に深く追及はせず魔剣ネビリムについての講釈を詳しくする比古清十郎にジェイドが感心した声を上げるが、昔見たことがあるだけとなんでもないといった様子で返す。
「まぁこれは単体で持っていても別になんら問題はないだろう。俺の見立てでは触媒としての役割だけでなく純粋な武器としても何か隠された力があるかもしれんが、この状態で一つだけしか武器がないならこれはそこらのなまくら以下の剣だ。何ら危険はないと見ていい」
「そうですか・・・ではその剣は私が持っておきましょう。特に役に立ちそうにもないとは言え剣を捨て置いて、よからぬ事を企む輩に拾われても面倒ですからね。これは折りを見てマルクトで保管するように手続きをしたいと思います」
「そうか、なら「ジェイド、いますか?」・・・む?」
そして最終的に別に気にする程ではないと比古清十郎が言えばジェイドも分かってると言いつつ一応の為に保管はしたいと意志を示し、比古清十郎は剣を手渡そうとする。するとそこにディストが入室してきたことに二人とも視線をそちらに向ける。
「っ!・・・そ、それは・・・!」
「・・・どうしたんですか、ディスト?」
「っ、い、いえ!な、何でもありません!わ、私はこれで!」
‘バタンッ!’
だがディストは入室してすぐ剣を見つけると、愕然としたような声を漏らした。その事にジェイドが訳を問うが、すぐにディストは慌てて動揺を声に現しながら部屋を出ていった。
「・・・ヤツはこの剣を見て、動揺をしていたな」
「まさか、ディストは惑星譜術の事を知っていたのでしょうか・・・」
「十中八九そうだろうな、あの様子では」
しかし明らかにあからさまな動揺に二人はすぐさまあたりをつけた、惑星譜術や触媒について知っているだろう事を。
「・・・話が変わった、これは俺が預かる。それと後、次にマルクト領に入る時はヤツを監視つきで俺達から隔離するようにしろ。何をしでかすかわからん分、今の状況で何か起こされた場合面倒だ」
「・・・そうですね。わかりました、そうします」
比古清十郎はそこから剣を手元に戻しつつこれからのディストの事を真剣な様子で指示し、ジェイドもその言葉に納得して頷く。















・・・そして後にグランコクマに着いた時ディストはルーク達一行から外される訳だが、この一件があっての事だとまではルーク達には伝えられなかった。












・・・しかしこの魔剣に発端する出来事は、ここで終わりという訳ではなくまだ後に続いていた。








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