時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

・・・まずマルクトだがこちらでは今までにない珍事が起こった。それは今となっては生涯独身を貫くのではと目されていたピオニーが結婚をしたことだ。

相手はマルクト内で然程力のある貴族とは言えない家柄の人物だが、ピオニーいわく本気でこの相手ならと思える相手を探した結果との事。だがそれより人々に更に印象深いことをピオニーは告げた、それは「俺もまだ引退するつもりはないとはいえ、近いか遠いかは別にしてもいずれ死ぬ身。ならばこそ後の為にも自分の子を為し、老害とならないように全てを託し引退をしたい。老兵は死なずただ去るのみ・・・俺もそうしたいから今度の結婚に踏み切ったんだ」と言った物だ。

この言葉にマルクトの臣民は驚くと同時に、疑問に思ってもいた。誰があの頑なだったピオニーの心を動かし、結婚にまでこぎ着かせたのかと。しかし結局真実は誰も知ることの出来ないまま時は過ぎた。

・・・そして数年が過ぎた頃にはピオニーとその相手に子供が出来た事でマルクトは沸き立ち、またつつがない政治をしていたこともあり国の安泰を疑う者は内にも外にも出るような事はなかった。






・・・それで今度はキムラスカだが、こちらもさして問題が起こってはいなかった。ルークの成人の儀から数年後、インゴベルトは後のことをルークが主導して行うようにと玉座から身を引いた。これは一部ではピオニーの言葉を受けて真似をしたのではなどとの邪推な噂も立ったが、当人の年齢やルークが頭角を現した活躍をしていたことから噂はすぐに立ち消えとなった。

そしてそのルークに関してナタリアがいない事から新たな婚約者は誰になると国内では密かに噂をされていたが、数年後自身の専属のボディーガードを勤めていた女性・・・セカンという女性と婚約をしてすぐに結婚となった時は人々は驚きを隠せなかった。

しかしその人々の反応とは違いキムラスカの上層部はそれが当然の物といった態度を崩すことはなく、そしてその声も次第に無くなっていった。顔こそルークに似てはいるが貴族や王族などではないセカンは始め公務に手間取ったりする様子も浮かべていたが、それを補ってあまりある人柄の良さに加えて様々な仕事に対しての要領を掴む早さを見せるその順応性に。

・・・しかしそれでも何故セカンを選んだのか、という謎は残る。だがそれもルークから話を聞いた者が「好きになったから」と忌憚のないまっすぐな答えを返されたことで、人々は恋愛結婚が成り立つものだとルークとセカンの美談を褒め称えた。だから、と言うわけではないがキムラスカの政治はマルクトと同じく真っ当な物であり支持率は高い。






・・・しかしその二国とは対照的に厳しい現状が続いてるのはダアトだ。

預言が詠めなくなった後信者からの献金も著しく減りケセドニアからの支援もなくなったことで、人の数が以前とは比べ物にならないほど減った。これは金の流れもあるが外郭大地が魔界に降りてから存在が明らかとなったユリアシティに関連して、かつての預言に対する盲目的に従うべきという活動の一部始終が過去の物も相まって出てきたこともある。

そんなこともあって今となってはダアトにユリアシティはローレライ教団の自治区と言う見方から、かつての過去を改めて知るための歴史見学をするためだけの地となっている。

・・・ただ昔ならそんな扱いはダアトの者からすれば屈辱的な物だっただろうが、陣頭に立つイオンはそんな苦境に苦しむ姿を見せることなく必死に活動を続けている。どうにか作物なり名物を作りダアトを維持するための案も試行錯誤して考えつつ・・・









・・・全ては滅びを避ける為、綺麗事だけではない力をもってしての変革が目的に作られた剣術であった。しかし強力無比であるその剣術の使い手ですらも飲み込み、滅びは訪れんとした。

しかし今はもうそのような事にはなり得ない、剣術の使い手も変わり時代をただ壊すだけでなく守ることを知り変えることを最上の選択として・・・星の命運を新たな物へと切り開いたのだから。



「・・・これで終わり、だね」
「終わったか。なら酒に付き合え、今日は相手が欲しい気分なんでな」
「珍しいね、また・・・いいよ、付き合う」



・・・全てのきっかけの時代より引き継がれてきた剣に意志、それはようやく役目を終えた。これからはただゆっくりと時代を見据えていくだろう、平和な時代をいつまでも望む形で・・・












This story is the end







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