時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「あの時の私は困惑しました、あのような事が外の世界では起こりうる物なのかと。ですが後に当時の謡将の思惑及び大詠師の思惑を知った時私はより愕然としました、預言をただひたすらに盲目に守ろうとする者に手段を問わずその風習を壊そうとする者・・・両者の思惑があまりにも強く、人々を省みぬ物であった為に」
‘‘‘‘・・・’’’’
無知が故に知った困惑、そして真実。ルークの昔を思い返す語りには一方ならぬ想いがこもっているために、聴衆はただ固唾をのみ余計な言葉を発さないよう静かに見守る。
「・・・ここでは私がマルクトからキムラスカに戻りその後の外殻大地の降下にプラネットストームの停止まで、それらを語るには時間があまりにもかかりますので省かせていただくがその旅で得られたものは辛くもありましたが、同時にかけがえの無いことを学ぶことも出来ました・・・それは預言がなくとも、人は生きて共に歩んでいけるという事です」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
そして本題と言わんばかりに一回顔を下げ改められて上げられた顔と声に聴衆はどよめきに近い声を上げた、真っ直ぐを見つめる表情と声には陰りの一切ない想いが浮かんでいたから。
「かつての旅が終わった後、私はマルクトのグランコクマにて手厚い歓迎を受け翌年にバチカルに戻りました・・・これは市井で言われているような預言の復活を望む者に対する牽制の一環であったことは否定しません、そしてそれがピオニー陛下の御厚意によることも」
更に続けてルークがマルクトにいた訳を丁寧に述べる・・・この辺りはキムラスカにマルクトにダアトの三国で擦り合わせが済んでいるが故の発言でもあり、真実でもあった。何も預言通りにいかせようと考えるのは国の上層部のみではない、故にピオニーはキムラスカにダアトと渡りをつけてルークをマルクトで保護する名目をつける傍らただキムラスカに帰すことの危険性を説いてもいた。だからルークは3年前年が明けるまでキムラスカからルークを返せと言った騒ぎが起こることもなく、グランコクマで過ごせていたのだ。
「それより後は私はバチカルにて日々を過ごし、今この時にまで至り皆様と平穏に顔を見せるに至るまでになりました・・・それは何故か?それは預言にただ無為に従わず、その意味を考えたが故にです。おそらくアクゼリュスを滅ぼすとあった預言通りに私が滅ぼし、キムラスカとマルクトで戦争を行ったとしたなら今頃私の命はなかったばかりかここに皆様が平穏無事に暮らしていたかどうか・・・それすらも危うくなっていたかもしれません。キムラスカかマルクト、どちらかを滅ぼす程の戦争となっていたならその人的被害も物的被害も想像を絶するものとなっていたでしょう。もしかしたら兵士だけでなく民である貴殿方自身に親しい者も戦争で失われていたかもしれませんし、物資不足で国が飢えていた事態になったかもしれません・・・」
‘‘‘‘・・・っ・・・!’’’’
それで預言の意味を知れたからこそ自分も皆も含めてここにいると戦争があった場合を仮定するルークの悲し気な言葉に、聴衆は沈痛な面持ちに変わる・・・一滴の血も流れない被害なき戦争などありはしない、むしろ規模が広がれば広がるほど被害は拡大されていく。ルークの言葉は酷く重くのしかかるが故に聴衆の心を打った、飢えもさることながら自分か仲のよい者。それらの命が失われる恐れがあると知らされた為に。








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