時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「ま、ペールに関しちゃそれでよかったけど・・・ナタリアに関しちゃ自業自得としか言いようがなかったな」
「ナタリア様、ですか・・・確かお話を聞く限りでは、今ベルケンドにいらっしゃるとか」
「あぁ、見張りの兵士付きでな」
それでルークがペールからの流れでナタリアの事を口にするが、ベルケンドと見張りの兵士という単語が自然に二つくっついた。それは何故かと言えば・・・
「あいつは性懲りもなく城を抜け出して俺のとこまで来たからな、それも強引に力づくでって形で。そして出した言葉は『私を助けてくださいまし、ルーク!』だったからな・・・あそこまでされたら俺じゃなくても助けるのは無理だったろうな、どうせ」
「・・・それも全て王女に返り咲きたいが故、ですか・・・」
・・・ナタリアが城を抜け出してまでルークに会いに来たが故だ。その事実にルークは少し遠い目をし、フリングスもなんとも言えない苦そうな表情を浮かべる。









・・・2年前、ルークがジェイドと共にバチカルに戻ってからは多少の気まずさは屋敷の人達との間にあったものの一応はつつがない生活を送っていた。しかしそんな生活の中、唐突にナタリアはファブレ邸の中にまで乗り込んできた。

この時ナタリアはバチカルに戻らされてからは下手に厳しい処分を下して国の醜聞を作りかねない事態になるのをインゴベルト達が避ける為、城の中でただ何もせず過ごす日々を強制させられていた。

そんなナタリアにとっての屈辱でいて不本意な日々の中でかすかに伝え聞いたルークの帰還という事実は、ナタリアにとって蜘蛛の糸程の細さしかないとは言え最後の希望だったことだろう・・・ファブレ邸の中に辿り着いたその姿は仮にも偽物と暴かれたとは言え王族とあろう者のその服は汚れに破れと酷く乱れていて、それがいかに必死に力づくでここに来たかを物語っていた。

・・・そしてルークが戸惑いに満ちた表情を浮かべる中でナタリアは自分を助けるようにと願いだしたのだが、ルークはその声に表情を引き締め・・・近くにいたジェイドと白光騎士団にナタリアの捕縛の命を出した、その声を最後まで聞こうとすることなく。



・・・ルークの声を受けてジェイドはいち速くナタリアの身柄を取り押さえにかかり、白光騎士団もハッとしたよう続いて取り押さえにかかった。
その行動にナタリアも最初はもがいて抵抗はしたものの、ジェイド一人だけならまだもがけたろうが白光騎士団まで加わってはまともに動くことも出来ずあえなく捕らわれた。

それでその場の収集に駆けつけてきた公爵にルーク達はナタリアの身柄を渡して後は任せた訳だが、流石に城を抜け出しファブレ邸にまで無理矢理来た事はインゴベルトと言えども看過出来る事ではなかった。

・・・その後ルーク達はナタリアがどのような処分を受けたか、それを公爵から聞いた。それは要約すればこれだけの事をやってしまえばいかに同情の余地があるとは言え許されることではないが、命まで取ることは民の目にも関わることになる。だから今度はベルケンドにその身柄を送り監視付きで生涯を過ごさせる、次にそこから出ようとしたら今度こそもう命はないという宣告をつけた形で・・・と。



・・・ナタリアがベルケンドに送られたという情報はマルクトの耳にも入ってきた、本来なら他国であるからキムラスカにとって醜聞と言えるニュース故に極秘にしたいであろうことのはずなのにだ。それが何故マルクトに届いたのかと言えば、キムラスカが特に隠す必要もないと多少オブラートに包みこそしたもののちゃんと公表したためだ。

だからこそマルクトはこの行動にキムラスカがナタリアを真に見捨てた物と判断した、最早王女として拾い上げる気は全く無いものとして。

・・・恐らく今頃ナタリアはベルケンドで空虚な生活を送っていることだろう、そしてこれからもそうなることだろう。けして何も起きることもなく、起こすことも出来ない生活の中で暮らし続け・・・しかしそれもナタリアが実を取らず名を追い求めてきたが故の結果だ、理想という名をただひたすらに盲目に求めたことで・・・








19/41ページ
スキ